2008年06月29日

Bud Powell: Best (Steeplechase)

Bud Best
バド・パウエルには大学のように「前期」と「後期」があって、前期はもう天才の極地。次から次へとフレーズが飛び出るし、どんなにチョッパヤでもものともせずガンガン進んでいた時期で、アルバム的には『バド・パウエルの芸術』、『ジャズ・ジャイアント』、『ジニアス・オブ・バド・パウエル』それに、ブルーノートの『Vol.1』『Vol.2』などを指します。一方、後期とは上記のアルバム以外の時期を指し、天才性の閃きに翳りが出てきたとか、指がもつれるようになったとか、精神に異常を来たしたとか色々言われていますが、要は前期ほどの輝きや興味を持てなくなった時期を指します。

もっとも、日本で人気の「クレオパトラの夢」は後期作品のアルバムに属しているし、後期にも波があって、いい時期と悪い時期があることは油井先生が指摘している通りです。今日紹介するのは、後期も後期、1962年にストックホルムのクラブ「ゴールデン・サークル」で録音された『アット・ゴールデン・サークル』全5集のベスト盤です。バドの『ゴールデンサークル』は名盤なんですが、何せ5枚もあるし、重複曲も多いし、うめき声がいつも以上だし、そもそも評判の悪い後期だし、ということで知る人ぞ知るといった位置に落ち着いています。その中から選りすぐったベスト盤ということで、バドの全キャリアを通じてのベスト集ではないことを断っておきます。また、未発表盤からも4曲ほど取られています。

録音は1962年4月19日と23日、および9月という記録です。メンバーはバドの他、ドルビョン・フルトクランツ(b)、スーネ・スボングベリー(ds)となっています。地元のミュージシャンでしょうか。時期的には大江健三郎が「老いたセイウチ」とたとえた時期と重なるかもしれません。

いつも通り1曲づつ紹介してもいいのですが、このアルバムに関してはそれを避け、特筆すべきトラックについて書きたいと思います。

まずは2曲目の "I Remembaer Clifford"。音楽が止まりそうで止まらない、ギリギリのところで圧倒的に成立している名演です。以前、若い友人と一緒に音楽を聴いていて、ある音楽家(いわゆるアイドル)の演奏を聴いていて、「この音楽は止まっているね」と言ったところ、「どういうことだ?」と質問を受け、音楽が止まる感覚が分からない人もいるのかと気づきました。ということでここに私なりの考えを書いてみたいと思います。

「音楽が止まっている」というのは、休符と関係します。休符を無意味に休んでいるような音楽は、どこか「止まっている感じがする」。仮にインテンポでも休符で気を抜いた途端、音楽は止まります。ドラムやベース、ポップスなら打ち込みがステディーなビートを刻んでいるので止まりそうになくても、やっぱり休符での気の抜き具合が伝わってくるような時、つまり、休符以前と休符以降がブッツリと切れているような時、私は「止まっている」と表現します。

ジャズだと、普通にやっていれば止まらないんですが、あまりにもテンポを落とすと、休符に漂う緊張感いかんで、止まって聴こえる時がある。バドのこの曲の演奏はテンポが遅すぎて=休符の間が長くて、普通なら止まって聴こえそうなほどの演奏なんですが、流れていく。理屈としては、おそらく音楽の底流に細分化された急速なビートが流れているんでしょうが、分かりやすくいえば、休符を休んでいない、休符こそ歌っているわけです。

おそらくもうボロボロだったと思うんですね、この時期のバドは。全盛期に比べて指も動かないし。にもかかわらず、音楽になっているのはこの点あるんじゃないかと思うわけです。同じことは、もう少しテンポは上がりますが、 "Like Someone in Love" にも当てはまります。この曲といったらバドを抜きには語れないほどはまった演奏です。

この時期のバドは、うなりつつ口をモグモグさせていた、いわゆる「モグモグのバド」です。Youtubeにこの時期の映像があったので貼っておきます。曲は "Anthropology" でリズム・チェンジです。



いずれにせよ『ゴールデン・サークル』は枚数が多い上に、散漫なところもあり、こういうベスト集は本当に助かります。これで全体を俯瞰した後、1枚づつ買い揃えていくのがかしこいやり方だと思います。このアルバムの魅力にはまれば、立派なバド・ファンです。いまは廃盤ですが、丁寧に中古店を当たれば必ずあります。ジャケは上の画像を参照。

ラベル:jazz, ジャズ
posted by G坂 at 08:27| Comment(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月15日

Wynton Kelly: Smokin' at Half Note (Verve)

halfnote
フルハウス』で共演したウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリーは相性がよかったのか、このライブ盤で再び名演を繰り広げます。

録音は1965年6月と9月。場所はライブ録音がニュー・ヨークのクラブ「ハーフ・ノート」でスタジオ録音がヴァン・ゲルダー・スタジオ。メンバーはウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)のウィントン・ケリー・トリオにウェス・モンゴメリー(g)が加わった形になっています。

まず、何はともあれ1曲目の "No Blues" です。ウィントンはイントロの天才だけれど、ここでもまたその天才性が発揮されて「絶対名演になる」という感じのイントロ。トップ・バッターはウェス。畳み掛けるようなシングルトーンによるリフをしつこいぐらい繰り返して演奏のボルテージを高めていき、同時にグループの一体化(グルーヴ感)を構築するや、オクターブ奏法に切り替えスリリングなソロを展開。続いてコード奏法に移る。この展開を何コーラスにもわたって繰り返し、ソロ全体が大きなリフのようになっていますが、間然とするところは全くありません。ウィントンも伴奏をしながらウェスに聴きほれているような風情がします。続くウィントンは全盛期ほどの迫力はありませんが、ウェスと同じくしつこいようなリフを、珠を転がすようなタッチで弾いていきます。途中ウェスの合いの手に応えたりと充実したソロです。ポール・チェンバースのベースソロを経て合奏に戻って終わり。13分にわたる熱演ですが、スリリングな展開に時間を忘れ、あっという間に終わったような感じがします。

2曲目のバラード "If You Could See Me Now" はトリオによるドラマティックなテーマ演奏に続いて、ウェスのギターが先発。これがまたいい。レイド・バックした感じのゆったりとした展開の中に恐ろしいまでのテクニックをきっちり詰め込み、精緻を極めたソロになっています。この辺がグラント・グリーンとの違いでしょうか 8) もっとも、グラント・グリーンも好みなんですがね。ウィントンのソロはそのままエンディングに入っていくような感じで、ドラマティックなソロ。

3曲目 "Unit 7" はベーシストのサム・ジョーンズによる作品。ウィントンが先発して華麗なソロを展開。その後登場のウェスは非常にエキサイティングです。

4曲目の "Four on Six" はウェス・オリジナルで「サマータイム」のコード進行を使っています。ウェスのソロは自分のオリジナルということもあって実に素晴らしい。ギター奏法のショーケースといっても過言ではありません。ウィントンは元歌「サマータイム」のメランコリックな気分がよく表れたソロです。ポールのソロはアルコ弾き。ジミー・コブのドラムソロまで付いています。最後の合奏で聞こえるのは歴史的な録音『ミントンズ・ハウスのチャーリー・クリスチャン』の "Swing to Bop (Topsy)" に聴かれるフレーズですね。

ラストはスタンダードの "What's New?"。ウェスによるこの曲のテーマ演奏を聴くと、彼のバラード解釈がパット・マルティーノにダイレクトな影響を与えていることが分かります。ウィントンのソロになるとイン・テンポに転じ、ドラムがステディーなビートを刻んでわりと明るめの雰囲気に変わります。その雰囲気を保ったままウェスがソロを半コーラス取りテーマに戻ります。味わい深いバラードだと思います。

『フル・ハウス』、『インクレディブル・ジャズ・ギター』と並ぶウェスの名盤。

posted by G坂 at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月14日

Louis Armstrong: Hello, Satchmo! Again (UM)

hello sachimo
久々にCDを購入しました。このCDはサッチモのコンピレーションで『ハロー・サッチモ!〜ミレニアム・ベスト>』と対になったものです。このアルバムも、今回買ったアルバムもその音源はほとんど網羅しているのですが、こちらでフィーチャーされている "Yellow Dog Blues" や "St. Louis Blues" の収められた『W.C.ハンディー集』のLPをこの前取り出したら激しく黴が生えていて、あわててクリーニングしたものの溝に跡を残したらしくブチブチいうので困っていました。今回セールで安く買えるというメールが届いたので求めることにしました。このアルバムは権利関係を調整して、さまざまなレーベルから選り抜かれた名曲のコンピレーションです。

1曲目 "What a Wonderful World"、邦題『この素晴らしき世界』はあまりにも有名でほとんどの人がご存知だと思います。私もずっと昔からこの曲を知っていましたが「綺麗な曲だな」といった程度の認識で、それほど強い関心はありませんでした。この曲の本当の力に気づかされたのは映画『グッド・モーニング・ヴェトナム』でこの曲が使われるシーンを観たときです。まさにこの歌の歌詞通りの美しい田園がアメリカ軍の北爆で焼かれ、ヴェトナムの青年達がゲリラの疑いで裁判手続きを経ることなく射殺されていくシーンのバックにこれが流れているわけです。何たる皮肉、いや皮肉という言葉を超えて悲劇がそこにはありました。

最近映画のその部分をクリップした動画をYoutubeで見つけましたので、貼っておきます。



ロビン・ウィリアムスはこの惨状に気づかずにこの曲を流しているんですよね。

実際『グッド・モーニング・ヴェトナム』がきっかけとなってこの曲は再ヒットしたそうです。

2曲目 "Do You Know What It Means to Miss New Orleans" は映画『ニューオリンズ』の挿入曲で、映画ではビリー・ホリデイも歌っていますが、このヴィクター吹込みではビリーを除いたメンバーでの演奏。3曲目の "Our Monday STATUS: Publish
DATE" は歴史的な1928年のアール・ハインズとの吹込みではなく、タウン・ホール・コンサートからのもの。

さて4曲目の "On the Sunny Side of the Street"、邦題『明るい表通りで』がこれまたナミダモノ。レスター・ヤングの記事でもかつて書きましたが、レスターの同曲と同じく、明るくて暗い、楽しくて寂しいといったニュアンスの素晴らしさが圧倒的に迫ってくる名演、絶演となっています。

5曲目の "I Surrender Dear" はスタンダード。バニー・ビガードのクラリネットとルイのヴォーカルが全面にフィーチャーされています。

そしてお目当ての "Yellow Dog Blues" と "St. Louis Blues" は『ルイ・アームストロング・プレイズ・W.C.ハンディー』というコロムビアのアルバムからの2曲。両曲ともベッシー・スミスの名演で知られ、「セント・ルイス」のほうでは若き日のルイが伴奏を勤めていますていますが(「イエロードッグ」はジョー・スミスが伴奏)、ここでのサッチモもほとんど頂点を極めたといってもいいような演奏です。「イエロードッグ」における、畳みかけとクライマックスへのもって行きかた、そして上でも書いたニュアンスは比類なきものです。「セント・ルイス」もこれに次ぐ名演で、本来の曲では第2部にあたるハバネラの部分を冒頭に持ってきて、エモーショナルに歌い上げた後、ルイ・プリマという巨漢の女性のボーカルからルイの歌、そして掛け合いへとコミカルに進んでいく、いわゆるアンチ・クライマックス(漸減法)を取りつつ、ラスト・コーラスの合奏ではルイがハイノートを駆使して演奏を盛り上げて終わります。

8曲目の "Basin Street Blues" も1928年の伝説的な吹き込みの一角をなす曲ですが、このアルバムに収められているのは、映画『グレン・ミラー物語』のサントラ音源だそうです。ベイブ・ラッシン(ts)がホーキンス流丸出しのソロを取っていて微笑ましい。ラスト近くでジーン・クルーパのドラムソロが聴かれます。

次は名盤『エラ・アンド・ルイ』からの2曲、 "Cheek to Cheek" と "Nearness of You" です。エラ・フィッツジェラルドというと『イン・ベルリン』の派手なパフォーマンスが圧倒的で、私も最初はこのアルバムが好きだったのですが、聴きなれてくると飽きる。一方ここに聴かれるエラは抑えた味わいが深く、いつまで経っても飽きない歌だと思います。続く11曲目もエラとルイが組んだアルバム『ポギーとべス』から、もちろん "Summertime"。 これも本当に名演です。

12曲目 "When It's Sleepy Time Down South(「南部の夕暮れ」)" はロスのクラブにおけるライブ録音。この曲は彼のバンドのテーマ曲だったそうです。そしてルイ晩年の最大ヒット曲 "Hello, Dolly!" が続きます。このブログのプラグインにも "Hello Dolly"というのがあって、管理画面の上にこの曲の歌詞が出てきます。

14-16は "What a Wonderful World" と同じアルバムに収録されていたものでルイ最晩年の1968年の吹込みから。もはや特に新しいことに挑戦することもなく、トランペットもかろうじて吹いているといった時期ですが、歴史と経験からしか醸し出せない実に味わいのある演奏です。

最後はサッチモのディズニー集から "When You Wish upon a Star (「星に願いを」)"。これも68年の吹き込みですが、やはりルイの人柄、やさしさがにじみ出た歌になっています。

ジャケットは藤子不二雄(A)先生。「どーん!」といってトランペットを吹いてそうなサッチモです :)

posted by G坂 at 19:10| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月10日

Keith Jarrett: Bye Bye Blackbird (ECM)

Bye Bye Blackbird

マイルスは1991年8月25日に亡くなりましたが、その後に出された「トリビュート物」の数は計り知れず、中には「マイルス頼み」のバイショウ的感覚が突出しすぎで、却っていやらしいものもあります。マイルスに限らず、こうしたいやらしい「トリビュート」を見せられてきたジャズファンには、私を含めてトリビュート物に懐疑的な気分を持っている人が多いようです。

このアルバムもまたキースによる「マイルス追悼盤」と言うことが出来ますが、しかし、そんないやらしいトリビュート物ではありません。レコーディングは1991年10月12日、マイルスの死の直後といってもいいような日付ですが、直後過ぎて「んじゃ、死ぬ前から準備していたのか?」という疑念さえおきそうです :P が、まあ、そんなことはないでしょう、演奏を聴けば分かります。メンバーは、いつもの通りゲイリー・ピーコックのベースに、ジャック・ディジョネットのドラム。

1曲目 "Bye, Bye, Blackbird" はマイルスの十八番で、『ラウンド・ミッドナイト』その他のアルバムに彼の演奏を聴くことができますが、キースにとっても得意曲だったらしく、以前に紹介した『アット・ザ・ディア・ヘッド・イン』でも取り上げています。

2曲目 "You Won't Forget Me" は、シャーリー・ホーンの吹き込みでも有名な曲ですが、実にしみじみした悲しい曲想で、マイルスの死を悼むキースの心情が伝わってきます。特に後半、寺島さんの言う「あれ」がでてきます。「あれ」とはキースのスタンダーズ物で、時折原曲のコードや展開を無視してたたみかけるような、美に淫するような哀愁感漂う即興演奏をおこなう部分のことで、この曲でも悲しげな「あれ」が展開されます。

"Butch and Butch"はオリバー・ネルソン作で、正統派バップの香りも高い曲です。ディジョネットのドラムソロが大きくフィーチャーされています。4曲目の "Summer Nights" はアンダーレイティッドなアルバム『クワイエット・ナイト』からの一曲でしょう。キースのは哀愁あるボッサの名演です。

5曲目 "For Miles" はキース他3人名義なので、即興演奏でしょう。マイルスへ捧げた曲です。最初の展開から「天国への7つの階段」となりそうに聞こえますが、そのままポリリズミックなドラムソロへと展開して、その後ベースラインが「ソー・ホワット」みたいなことをはじめた後、キースがスパニッシュ全開に入ってきます。『スケッチ・オブ・スペイン』への敬意でしょうか。後半はスパニッシュあるいは北アフリカ的ななムードをたたえた「あれ」が10分ほど続きます。むしろこの曲は「あれ」のかたまりといってもいいような哀愁に満ちたトラックで、このアルバム中の白眉だと思います。

6曲目の "Straight No Chaser" はモンクの曲で、マイルスは『マイルストーンズ』で取り上げています。ビバップど真ん中という感じの演奏。

7曲目のスタンダード "I Though about You" もマイルスの十八番で、『いつか王子様が』ほか数枚のアルバムでも取り上げている曲で、明るくも物悲しい美曲&美演に仕上がっています。地味だけれど、耳を傾けるとナミダモノの演奏。

8曲目 "Blackbird, Bye, Bye" も3人名義ですが、"Bye, Bye, Blackbird"を下敷きにした即興的な演奏で明るくこのアルバムを締めくくっています。

posted by G坂 at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月03日

Art Blakey: The Jazz Messengers (Columbia)

Jazz Messengers
ハード・バップのど真ん中にある曲は何かと聴かれれば、"Nica's Dream"じゃないかと答えています。この曲、作曲はホレス・シルバー、ハード・バップど真ん中からファンキーあたりまでの屋台骨を支えたピアニストで、ブルーノート後期に「宗教物」といわれる懐疑的なレコードを連発したものの、最近は回帰して普通のジャズを堂々と弾いている人です。

彼の "Nica's Dream" といえば、ブルーノートの『ホレスコープ』が有名ですが、この曲に限って言うと、今回紹介する "The Jazz Messengers" の演奏が非常に優れています。録音は1956年(モダンジャズの当たり年です)の4月と5月。メンバーはリーダーのアート・ブレイキー(ds)他、ドナルド・バード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ホレス・シルバー(p)、ダグ・ワトキンス(b)です。この後、ホレスがバードやモブレーを引き連れて独立してしまい、残されたブレーキーはその後ピアノと作曲にボビー・ティモンズを迎え、リー・モーガン(tp)、ベニー・ゴルソン(ts+作曲)をメンバーに、歴史的なアルバム『モーニン』を吹き込んだことを思えば、大人の事情とはいえ歴史の偶然と不思議さに思いをいたします。

1曲目 "Infra-Rae" はハンク・モブレーの曲で急速調とマイナーな曲想が魅力のハード・バップらしい曲。ソロの先発はバード。情熱的なソロが魅力です。続いて三連も豊かなホレスらしいピアノソロ。そして作曲者モブレーのわりとすばしこいソロが続きます。モブレーはパーカーがよく繰り出すフレーズをところどころ引用したりして乗りに乗っています。最後にアンサンブルとブレイキーの4バースを経てブレイキーのドラムソロ。特に後半はドラム・ソロのショーケースになっています。

そして2曲目にして、永遠の名曲 "Nica's Dream"。ここでのバージョンは情熱的なホレスのバッキングにサポートされてモブレーが先発。これが実に味のあるソロ。曲を吹いているというより、何かを語りかけられているような気にさせられる名ソロです。続くバードのソロはクリフォード直系のクルクルと回転するフレージングを基調とした華やかなものです。クリフォードほど上昇下降を展開しませんが、それが彼の個性です。バードの後に出てくるホレスのソロ。冒頭の音を聴いて御覧なさい。どれほど彼がこの曲にかけているか聞こえてきます。そして、時を同じくしてブレーキーが細やかに奏法を変えてきます。これほどお互いの音を聴き合えていたのに・・・ホレスのソロを経て、アンサンブル〜ショートソロの展開となり、曲に戻ります。実に名演。マイナー、ラテン・フレーバー、「マイルス・ロリンズ・コルトレーン」抜き、2管。これぞハード・バップのイデアではないかと思われる演奏です。

3曲目の "It's You or No One" はスタンダード曲。バップ風にアレンジされています。全員が快調にソロを飛ばします。4曲目 "Ecaroh"も優れたハード・バップ曲で、ネーミングはHoraceのアナグラム。メジャーキーですが、不思議と各人のソロがくすんでいるところがやはりハード・バップらしい。5曲目"Carol's Interlude" はモブレー作曲のマイナー曲。これなんかも実にこの時期らしいし、ブレイキーも煽りに煽っているんですよね。 "The End of a Love Affair" はスタンダードですがテーマはラテンリズムで演奏されています。この曲はハービーさんとチャカ・カーンも演奏していて、本当にエバーグリーンな名曲だと思います。

最後はモブレー作曲の、その名も "Hank's Symphony"。チャイナな感じでブレイキーもシンバルを銅鑼に見立てて叩くイントロから急速調なテーマになだれ込みます。テーマ終了後ブレイキーのかなり長いドラムソロが全面にフィーチャーされ、管はアンサンブルを中心とした裏方に徹しています。

下のCDではなんと5曲もプラスされていますが、再発の端境期で妙に高い中古にリンクしています。いま急いで買う必要はありません。いずれ再発されます。

posted by G坂 at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月27日

Wynton Kelly: Wynton Kelly! (Vee Jay)

wynton kelly
ウィントン・ケリーがマイ・ベスト・フェイバリット・ピアニストであることは以前の記事にも書きましたが、その中でも最も優れているのが『ケリー・アット・ミッドナイト』であるのに対して大衆的な魅力は『ウィントン・ケリー(邦題『枯葉』)』にあると書きました。たしかに、『ケリー・ブルー』というより人口に膾炙されている名作もあるにはあるのですが、あのタイトル曲「ケリー・ブルー」は時代がついている。一方、この『枯葉』に聴かれるようなピアノソロは今でも十分通用するし、今でもこれほどスイングしているピアノはなかなか聴かれないのが事実です。

このアルバム、メンバーはウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、サム・ジョーンズ(b)、ジミー・コブ(ds)です。

1曲目の "Come Rain or Come Shine"。ビル・エバンスの演奏が実にシンネリ・ムッツリしているのに対して、ケリーのそれは実に跳ね回って楽しそうです。邦題「降っても晴れても」という割りに晴れが続いているようです(エバンスは雨続きのようですが)。2曲目はバラード "Make the Man Love Me"。歌伴の得意なウィントンですが、それにしても歌に丁寧なコンピングを施しているような名演になっています。

そして、タイトル曲の「枯葉」。これ、普通に使うコードとは若干違う解釈をしているんですよね、Bメロの部分が。まあ、それにしてもビル・エバンスとは別の行きかたを取りながら、これはこれでやはり潤みや哀愁のある名演に仕上がっています。

続く "Surrey with the Fringe on Top" (「飾りのついた4輪馬車」)も軽快なテンポながらも、イントロなんかエバンス風で笑います。やっぱり意識していたんでしょうね。しかし、アドリブに入ると、これはもうウィントンとしか言いようのない、個性全開のスイングするピアノに変わるところがまたよい。

5曲目 "Jone's Avenue"、6曲目 "Sassy"は共にケリーのオリジナル。後者はサラ・ヴォーンの愛称で、彼女に捧げられた曲だそうです。どちらも、オリジナルということもあって『ケリー・アット・ミッドナイト』に収められていそうな「乗りのよい」曲想です。

"Love I've Found You"はバラードで、しみじみとした曲想の中に左手の力と右手のつけるおかずも綺麗で、ケリーの絶頂期が捉えられています。バド派なんだけれど、バドのようにメランコリックではないケリーの魅力全開のトラックだと思います。続く "Gone with the Wind" はジミー・コブのドラムの妙技も聴けるスタンダード。ウィントン以上に歌っているドラムが魅力です。4バースにも聴かれますが、それ以前にウィントンのアドリブの背後に聴かれるドラムが魅力を振りまいています。

最後の曲 "Char's Blues" は冒頭にミキサー室の声が入ったあと、軽快なブルースが始まります。ウィントンらしく華麗なピアノソロに続いて、サム・ジョーンズのベースソロも聴くことができます。

ウィントン・ケリーの絶頂期を捉えたジャズ・ピアノファン必携の一枚です。

posted by G坂 at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月08日

Oscar Peterson: The Way I Really Play (MPS)

The Way I Really Plays

昨年12月にオスカー・ピーターソンが亡くなりました。彼はライオネル・ハンプトン、ベニー・カーターと並んで、決して亡くなることはないジャズマンと思っていたのでびっくりしました。もっとも82歳ということで、あの巨躯を支えて来たことを考え合わせれば、大往生といえるのではないでしょうか。オスカーPの作品は枚数も多いので、今回は特に私の好きな1枚を紹介します。

この The Way I Really Play(邦題『オスカー・ピーターソンの世界』)はMPS (Music Productions of Stuttgart) 時代の最高傑作として評判の高いアルバム。さらに、このレーベルは音がよいので、ピーターソンのテクニックが余すところなく捉えられているといわれています。録音は1968年4月、ドイツ、フィリンゲン。ハンス・ゲオルク・ブルナーシュワー・プライベート・スタジオというドイツらしく長い名前のスタジオ録音ですが、スタジオ・コンサート風にリスナーが入っていて拍手などが聴こえます。メンバーはピーターソンのほか、サム・ジョーンズ(b)、ボビー・ダーハム(ds)のピアノ・トリオ編成。

1曲目 "Waltzing Is Hip" はタイトルどおり3拍子の曲ですが、ピアノのレンジをフルに使ったダイナミックで乗りに乗った演奏と、それをしっかりと捉えた録音に驚きます。このガンガンに飛ばす高テンションの1曲目から、実にリラックスしたムードの2曲目 "Satin Doll" へと繋がるところが特に好きで、何度もテープを逆戻しして聴いたものです。

実はこのアルバム、中学生の頃に近所のレンタル・レコード店で借りてテープにダビングして、そのテープを長い間聴いていました。思い返すと、当時はレコードをレンタルしていたんですね。CDとは比べ物にならないほど繊細な扱いを要求するレコードで、こちらも出来るだけ傷をつけないように「お借り」して、家に帰るとすぐにテープにダビングして、再び仕舞い、翌日返しに行ったわけです。とはいえ、私がレンタルで済ましたジャズ・レコードはこれぐらいしか覚えていないので、ジャズ・コーナーはあまり充実していなかったんじゃないかと思います。当時猖獗をきわめていたフュージョンなら割とあったのかもしれませんが、今と違い不寛容だった当時は見向きもしなかったので覚えていません :D

その「サテン・ドール」が、リラックスしたムードで実によい。10分近い演奏なんですが全く飽きさせることなく、ピアノを目一杯に使ったフルレンジのオーケストラルな演奏から単音でシンプルに展開するソロ、可憐な音使いで小さく花を咲かせたと思えばブルージーにやくざな音を多用してみたりと、自在にピアノをコントロールしています。「この時間がこのまま続いてくれれば」と思わせる素晴らしい演奏です。ただし、キース・ジャレット顔負けの唸り声が入っています 8)

3曲目は "Love Is Here to Stay" 。ライナー・ノーツでいソノてルヲさんが「アート・テイタム風のイントロ」と書いていますが、全くその通りで華麗に球を転がしています。リズムが入ってくるとミディアム・テンポになりテーマを終えた後のアドリブは、これまたジャズ・ピアノのショーケース。「サテン・ドール」ほど長くありませんが、よくまとまった作品です。4曲目の "Sandy's Blues" はピーターソンのオリジナル。「サンディー」とはサンドラ夫人のこと。タイトルどおりのブルースで、リラックス・ムードが横溢しています。途中からテンポアップしてブギ、速弾き、コード弾きと様々な技巧を駆使してエリントンが呼んだように「鍵盤の大王」の貫禄を見せつけ、再びテンポを落としてブルースになります。この辺の緩急のつけ方も心憎い1曲。

5曲目はディズニー映画の名曲 "Alice in Wonderland"。1曲目と同じくワルツです。ビル・エバンスもこの曲で名演を残していますが、聴き比べればジャズ・ピアノ2大スターの個性の違いがよく分かるでしょう。ラスト・ナンバーは再びOPオリジナルで "Noreen's Nocturne"。ノクターンとは名ばかりで、夜にかけたら目が覚めてしまうほど景気のいい曲。サム・ジョーンズがギリギリとベースを掻き鳴らし、ボビー・ダーハムが太鼓を連打して演奏を盛り上げています。

私も現在はテープでなくCDでこれを楽しんでいます。

posted by G坂 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月06日

Herbie Hancock: Possibilities (Hancock Music)

possibilities

ハービー・ハンコックのライフワークの1系統として、ティンパン・アレイや40〜50年代ジャズ曲からの脱却というか、新しいスタンダード(ニュー・スタンダーズ)の追求というのがあるような気がします。これはハービーさんの師匠マイルスが推し進めていたもので、特に『ユア・アンダー・アレスト』にその姿勢が集約されていますが、従来のスタンダードではなく、かといってオリジナル曲でもない、ニュー・スタンダードを創出しようという流れをハービーさんが受け継いでいるような印象です。

今回紹介する『ポッシビリティーズ』も、このニュー・スタンダード系統のアルバムです。各曲にそれぞれゲストをフィーチャーして従来のスタンダードとは一味違った曲を取り上げ、その「可能性」を追求しているわけです。

1曲目 "Stitched Up" でフィーチャされるのが、ブルース歌手のジョン・メイヤー。こてこてのブルースではなく、白人のソフィスティケーションが入った聴きやすいブルース。歌が終わった後に出てくるハービーさんのソロはしつこい畳みかけでブルース・フィーリングがあふれるモノ。そのままフェードアウトします。2曲目の "Safiatou" のゲストは、ギターのカルロス・サンタナとペナン出身の歌手アンジェリーク・キジョーです。サンタナの南米的な情熱あふれるギターとメランコリックな声のキジョーとの掛け合いで歌が進み、ハービーのソロも二人のムードを引き継いだメランコリックなものになっています。

3曲目の "A Song for You" はレオン・ラッセルの名曲で、カーペンターズやカーメン・マクレエの名演が残っています。ここでのゲストは美人で、昨年は妊婦ヌードで世間を騒がせたクリスティーナ・アギレラ、しかし上手い歌手ですね。このアルバム中のベスト・トラックといってもいいような歌ですが、こう感じるのは私がとりわけこの曲を好きだからかもしれません。4曲目はポール・サイモンの曲で "I Do It for Your Love"、ゲストもポールです。元の歌を知りませんが、思いっきりジャズになっていて、歌+伴奏ではなくポールもヴォーカル・セクションを受け持っているといった感じです。

5曲目の "Hush, Hush, Hush" は黒人霊歌かと思ったら、ポーラー・コールという人の曲。歌はアニー・レノックス、スコットランド出身の歌手だそうです。そして6曲目、ニュー・スタンダード物の常連さん、21世紀のガーシュウィンかコール・ポーターかといった風情のスティングが登場します。曲は "Sister Moon"。カサンドラ・ウィルソンみたいな声で歌っています ;) この人はもともとジャズとの親和性が高いので、当たり前といえばあたりまえですが、ジャズとして素晴らしいトラックになっています。

7曲目はブルースのジョニー・ラングとイギリスのジョス・ストーンがゲストで、 "When Love Comes to Town"、U2の曲だそうですが、ベタのブルースですね。後半どんどん盛り上がっていき、ハービーさんのソロでクライマックスに達します。8曲目はビリー・ホリデイの名曲 "Don't Explain"。フィーチャーされているのはアイルランドのダミアン・ライスとリサ・ハニガン。なんか辛気臭い演奏です :cry:

9曲目はスティーヴィー・ワンダーの名曲 "I Just Called to Say I Love You"。ゲストはラウル・ミドン。盲目の歌手だそうです。そしてハーモニカでスティービーご本人も参加しています。しかし、この歌手、素晴らしい声です。スティービーのハーモニカも優しく美しい曲に仕上がっています。最後は "Gelo na Montanha - 第一楽章"。作曲とゲストはフィッシュのメンバートレイ・アナスタシオ。エコロジカルな音楽みたいです。

個人的な好みでは、1、2、3、4、6、7曲目のようなコクのあるトラックが気に入りました。

posted by G坂 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月03日

Kenny Burrell: Midnight Blue (Blue Note)

midnightblue

今から10年ほど前、東芝EMIでは "24bit by RVG" と銘打って、ブルーノートの名盤を名録音エンジニア、ルディー・ヴァン・ゲルダー(RVG) によるリマスタリングでCD化し、紙ジャケット仕様で発売していました。と言うより、もう10年も前になるんですね。ライナーの裏に第1弾発売が1998年7月となっているのを見て改めて気づきました。なんだかつい最近の出来事だったような気がしていたんです。昨年からプラケース仕様ではあるけれど、再びRVGリマスタリングが再発されています。

このリマスタリング・シリーズでも、ヴァン・ゲルダー本人が会心の出来であると語っているのが、今日紹介する『ミッドナイト・ブルー』です。録音は1963年1月7日。リーダーはケニー・バレル(g)で、他にスタンリー・タレンタイン(ts)、メジャー・ホリーJr.(b)、ビル・イングリッシュ(ds)、レイ・パレット(conga)という60年代ブルーノートの色彩が濃いメンバーです。

1曲目の "Chittlins Con Carne" はケニー・バレルのオリジナル曲で、このアルバムの顔とも言うべき曲です。最近「大和証券」のCMに使われましたが、イントロが長いので30秒CMでもほとんどがイントロに費やされ、テーマが出て来るのはCMの終わりぐらいということになり、それが却ってこのCMを印象的なものにしています。曲として聴く分にはそんなに長く感じるイントロではないのですが、CMの時間枠の中では長く感じるものなんですね。しかし名曲です。2曲目の "Mule" はブルース。ゆったりとしたスローブルースで黒々としたフィーリングが横溢しています。スタンレーが名ソロ。3曲目の "Soul Lament" はバレル・オリジナルのバラードで、ソロ・ギター。バレルの特色がよく分かる演奏に仕上がっています。4曲目でタイトル曲の "Midnight Blue"、5曲目の "Wavy Gravy"もバレル作曲のブルース。6曲目の "Gee Baby" は一応スタンダードですが、これもブルースの雰囲気を持った曲です。最後の曲 "Saturday Night Blues" も当然ブルース。スローなシャッフルのリズムに乗って各人がレイドバックしたソロを取ってゆきます。

いつもならば1曲ずつソロ・オーダーを書いたり、寸評を加えたりするのですが、このアルバムに関してはそういうことが余計に思える。と言うのも、このアルバムは全体で一つの曲、つまり『ミッドナイト・ブルー』という曲であり、一つ一つのナンバーはその楽章という感じがするからです。それほどまでにカラーがブルース一色に統一されたアルバムです。この頃から、いわゆるグルーヴ物と呼ばれるもう少し饐えた感じの退廃したアルバムが出てくるわけですが、この作品は饐える直前の熟成感が堪えられない名盤だと思います。

posted by G坂 at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月01日

Clifford Brown: New Star on the Horizon(Blue Note)

new star

日記ブログのほうで『美味しんぼ』の記事を書きましたが、その際10インチ盤について言及しました。レコードのLPにはサイズで12インチ(30cm)と10インチ(25cm)があり、初期のジャズLPには、よくこの10インチ盤が用いられていました。しかし12インチに比べると、当然ながら収録時間が短く、アドリブの発達とそれに伴う収録時間の延長化によって12インチが主流になっていったわけです。

この10インチオリジナルは、おそらくコレクターという人々からすると垂涎の的なのでしょうが、私はそれほど興味がありませんでした。しかし、数年前東芝EMIからブルーノート(そして後にはベツレヘムなど他レーベル)の10インチが復刻されたことがあり、その際にできるだけ持っているCDやレコードと重複しないように集めたことがあります。今回紹介する『クリフォード・ブラウン―ニュー・スター・オン・ザ・ホライズン』もそのときに買った一枚です。しかし、これはBNのクリフォード関係をまとめた名盤『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』と重複しまくり、というか全曲が納まっています。この10インチ復刻は完全予約制で、私もカタログを見ながら被らないように被らないように注文し、その時点ではこのアルバムを当然除外していました。それで当日品物を取りに行くと、いろいろよくしてくれていた店員さんが「私は『クリフォード』を一枚買いましたよ」といって見せてくれたわけです。実物を見ると、しかしなんとも欲しくなるもので「やっぱり僕も注文しておけばよかった」と言うと、「お譲りしますよ」とのこと。そのまま買って帰ったというわけです。

録音は1953年8月28日。メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ジジ・グライス(as, fl)、チャーリー・ラウズ(ts)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds)のセクステット編成。
A面1曲目は "Cherokee"。"All the Things You Are" や "How High the Moon" と並ぶバップの聖典です。曲の最初と終わりにアレンジがありますが、あとはクリフォードのソロ。1コーラス目はジョン・ルイスのピアノが弾くチェロキーのメロディーの上空でブラウニーのペットがアドリブを炸裂させます。後にブラウン〜ローチ双頭クインテットで絶世の名演を繰り広げるこの曲は、その演奏の冒頭でハロルド・ランドとブラウニーが互いに半コーラスずつメロディーとアドリブを対位法的に吹き分けています。その原型は実にここにあるわけですね。1コーラス目のサビに入ったところはパーカーの影響がもろに出ています。2コーラス目。ピアノがコンピングに変わり、より自由に飛翔するブラウニーが聞けます。2曲目の "Easy Living" がこれまた名演。ちょうどストリングスのようにアレンジされたバックを従えて、素晴らしいバラード演奏を繰り広げています。途中ダブルテンポになるところでナミダモノのフレーズが出ます。3曲目は クインシー・ジョーンズの "Wail Bait"。ラテンリズムのイントロに続いて整然としたアレンジのテーマが演奏されます。ソロの先発はジョン・ルイス。続いてジジのアルト。再びテーマが繰り返されたあと、満を持してブラウニーの輝かしいソロが炸裂します。次がラウズのテナーですが、やはりブラウニーには誰もかなわない。

B面1曲目はクリフォードのオリジナルで "Minor Mood"。イントロは冒頭がメジャーなのにマイナーになっていく不思議な曲想。テーマは『クールの誕生』の "Jeru"に似たようなメロディーで、ちょっとトリスターノ楽派の風味も入っています。そのせいかブラウンのソロも長く起伏に富んだホリゾンタルなライン。続くジジ、ラウズのサックスもそうで、なんだかリー・コニッツのセッションを聴いているような感じがします。2曲目の "Hymn of the Orient" はジジ・グライスの曲。哀愁のあるテーマです。ブラウニーが先発。曲の哀感を保ったまま目くるめくソロを展開します。ラウズとジジは半コーラスずつソロを取り、ピアノのジョン・ルイスが美しいソロを取ります。ドラムと各楽器との4バースを経て後テーマになだれ込みます。3曲目の "Brownie Eyes" はタイトル通りクリフォードのペットを全面にフィーチャーしたクインシーのバラード。A面の「イージー・リビング」と対になるような名バラードです。

最近このジャケット・デザインで『メモリアル・アルバム』が再発されたようです。しかも別テイクを含めると計18曲、3倍も入っています。『メモリアル・アルバム』は従来のジャケット写真のほうがよいような気もしますがRVGリマスターということで、音質も楽しみです。

posted by G坂 at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。