2015年08月10日

Billie Holiday: Lady in Satin (Columbia)

insatin

かつて英文学者の中野好夫先生がこう云うことをおっしゃっていた。「私は、学生の話を聞いていて、『ハムレット』を読んで感動しました、傑作です、と言うやつをぜったいに信用しない」と。『ハムレット』には不可解な切断箇所があるし、初めて読んで感動できるようなたちの戯曲ではない、と言うのが中野先生の論旨であった。

実はこの話、『レディー・イン・サテン』にも当てはまる。このアルバムは、長いことビリーを聴いてきた人にしかピンと来ないし、ピンと来てはいけない作品なのである。なぜか?それはこのアルバムが「ビリー・ホリデイというジャンル」のあとがきであり、学生や初心者はいつの時代にあってもあとがきから読んで感想文を書いてはいけないのである。

吹き込みは1958年2月18-20にかけて。まだ亡くなるまで一年以上があるが、この時点でこの状況であったことが、逆にこれ以降の彼女の人生に襲いかかった不幸に怖気が震える。伴奏は彼女の声と対照的なまでに美しいストリングス入りのレイ・エリス楽団。そのレイ・エリス曰く「彼女は一つの音程を維持狡ことさえ不可能であった。」

このアルバムに一曲一曲解説を加えることは、私には不可能である。なぜならばそれをしてしまうと、全曲にだめ出しを加えてしまうからだ。にもかかわらず、このアルバムを時折取り出しては聴く。それは私が「ビリー・ホリデイというジャンル」の虜になっているからだ。

努々これから聞く人はこのアルバムから聴いてはいけない。ビリーが嫌いになるからだ。寺嶋靖国さんの言う「酔っ払い女がクダ巻いている歌」に聞こえるからだ。そして、初めてこのアルバムで感動してしまったとしたらもっと問題だ。心の問題を抱えているフシがある。

初めて聴くならまずは以前の記事で扱った、"Me、Myself, and I" "Sailboat in the Moonlight"を聴くとよい。

と言うことで、そういうの聴いてきた人向けに、これが現状一番安価なバージョンじゃないかしら?


posted by G坂 at 22:41| Comment(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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