2013年01月17日

Benny Goodman: Carnegie Hall Jazz Concert (Sony)

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75年前の今日、1938年1月16日、ジャズ史上最も重要といわれるコンサートが開催された。ベニー・グッドマンによるカーネギー・ホール・コンサートである。それまで下賤な音楽と思われていたジャズが、クラシックの殿堂カーネギー・ホールで演奏された瞬間である。

このコンサートの模様がレコードとして世に出されたのはそれから12年後の '50年のこと。コンサートの実況は大型ディスクにカッティングされ、1枚は米国国立図書館収められていたがもう1枚が行方不明だったところ、たまたまベニーの娘が家の中から見つけ出したと言われている。しかし、こんな大切な記録が行方不明になるっていったい…

曲目は
Disk 1-Side A
1. Don't Be That Way
2. One O'clock Jump
3. Dixieland One Step (= Sensation)
4. I'm Coming to Virginia
5. When My Baby Smiles at Me
6. Shine
7. Blue Reverie
8. Life Goes to a Part

Disk 1-Side B
1. Honeysuckle Rose
2. Body and Soul
3. Avalon
4. The Man I Love

Disk 2-Side A
1. I Got Rhythm
2. Blue Skies
3. Loch Lomond
4. Blue Room
5. Swinging in the Rockies
6. Bei Mir Bist Du Schon
7. China Boy

Disk2-Side B
1. Stompin' at the Savoy
2. Dizzy Spells
3. Singm Sing, Sing
4. Big John's Special

私の持っているのはLP盤なので2曲("Sometimes I'm Happy"と"If Dreams Come True")がカットされているが、CD盤では補われている。

聴くべき曲は多いが、まずはオープニングの "Don't Be That Way" (その手はないよ)である。ソロのうしろでぐっと踏み込まれるジーン・クルーパのバスドラが、ジャズの勝利を祝う祝砲のように響き渡る。1-Aの3~7曲目は「ジャズの20年史」と題された企画もので、それまでのジャズ史20年の中で重要な演奏が取り上げられている。3.はODJB(オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド)にちなんだ曲であるが、曲名クレジットが間違っていて、本当は「センセーション」という曲。4.はビックス・バイダーベックに、5.はテッド・ルイス、6.はサッチモに、そして7.は実際にエリントニアン3名(ジョニー・ホッジス、クーティー・ウィリアムス、ハリー・カーネイ)を招いてエリントンにちなんだ曲である。

前半最大の聞き物は、なんといっても1-Bの1曲目、 Honeysuckle Roseである。BGのバンドメンに加え先のエリントニアン、おまけにベイシーアイツまで加わったジャムセッション。ソロはカウント・ベイシー(イントロ)→ハリー・ジェームス(テーマ)→レスター・ヤング(ts)→ベイシー(p)→バック・クレイトン(tp)→ジョニー・ホッジス(as)→ウォルター・ペイジ(b)→BG(cl)→ハリー・ジェームス(tp)の順で取られるが、圧倒的なのはやはりレスターのソロである。

2-Aの3曲目「ロック・ロモンド」と6曲目「素敵なあなた」はマーサ・ティルトンの歌入りだが、面白いことに「ロック・ロモンド」はスコットランド民謡、「素敵なあなた」はヘブライ民謡と、どちらも民謡由来の曲である。

後半最大の聞き物にして、このコンサートを象徴する演奏が2-Bの3曲目、知らぬ人とてない「シング・シング・シング」である。特に後半に聞かれるジェス・ステイシーのピアノソロは畢生の名演で、そのシングルトーンを生かしたソロは、アール・ハインズがサッチモとやった28年の「セントジェームズ病院」のメランコリックなソロを彷彿とさせる。

このアルバムは、奇しくも「ジャズの20年史」というコーナーに象徴されるように、これまでのジャズ史を集大成してその価値を高めたコンサートである。逆に言えば、これは終着点であり、ここから新しいムーブメントが起こるということはなかった。だが、このコンサートにインスパイアされたジョン・ハモンドによって、同じ1938年と39年の暮れにカーネーギー・ホールで『スピリチュアル・トゥー・スイング』コンサートが開かれることとなり、そこから新しいムーブメントが起きることとなった。


posted by G坂 at 01:23| Comment(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月04日

Billie Holiday: All or Nothng at All (Verve)

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Disc 2は'57年1月7,8,9日のセッション計13曲が収められている。

1. Day In, Day Out
2. Darn That Dream
3. But Not For Me
4. Body & Soul

5. Just Friends (Instrumental)
6. Stars Fell On Alabama
7. Say It Isn't So
8. Our Love Is Here To Stay
9. One For My Baby (& One More For The Road)

10. They Can't Take That Away From Me
11. Embraceable You
12. Let's Call The Whole Thing Off
13. Gee, Baby, Ain't I Good To You?

この数日ビリーは絶好調だったようだ。1曲目の "Day In, Day Out" などブランスウィック時代に戻ったかのような歌いっぷりで、歌に続くソロ(ハリー・スイーツ(tp)~バニー・ケッセル(g)~ジミー・ロウルズ(p)~ベン(ts))まで脂ののりきった演奏が続く。2曲目 "Darn That Dream" も本来とは違って若干明るい曲想で歌われ、ハリーは "It Might as Well Be Spring" の一節を、ベースのレッド・ミッチェルも "My Old Flame" の一節を引用したソロを取るなどなかなかにゴキゲンで、ちょっとハイテンションな演奏が続く。8曲目 "Our Love Is Here to Stay" のソロ後の歌など、かなり大胆にメロディーラインをアドリブしていて「ちょっと、レディーどうしちゃったの?またキメてんの?」と訊きたくなる程だ。
同じことはバラード群にも当てはまり、4曲目の「身も心」も、6曲目の「アラバマに星落ちて」、そして11曲目の「エンブレイサブル・ユー」も普段より気持ち速めのテンポでわりとロジカルに歌われていて、深く沈み込んでいくようなビリー特有の暗さがあまりない。

これらのレコーディングを聴きながらふと気づいたのだが、ちょうどのこの前年の’56年12月、ジョン・レヴィーというちんけなギャングが死んだ。この男、実はレディーのかつての愛人兼マネージャーであり、彼女を取り巻いていたろくでなし男の中でも群を抜いて質の悪いDV男であった。例えば宿泊先のホテルで彼女の髪をつかんでホテル中を引きずり回したり、絶対に反抗できないように酷い暴力を振るっていたという証言がある。この時期、別のマネージャーと別の恋人を見つけていたビリーではあったが、この男の呪縛からは逃れられていたなかったのではないか。コモドアレコードのミルト・ゲイブラーも「彼女は一人、死ぬ程恐れている男がいた」と証言しているが、おそらくこのレヴィーであろう(この証言ヴィデオの背景に思いっきり彼が映し出されていた)。そいつが死んだ。幾分かの悲しみはあっただろうが、それ以上に解放感で満たされていたにちがいない。

最後のチューン、"Gee Baby" の冒頭 "What makes me treat you the way I do" のいつになく高揚した歌い方を聴くと、 このような背景に思いをはせるのである。


posted by G坂 at 09:27| Comment(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月03日

Billie Holiday: All or Nothing at All Disc 1 (Verve)

all or nothing

ビリー・ホリデイ後期の最高傑作は下に取り上げた’55年8月23日と25日のセッションだと思うが、それに劣らず素晴らしいセッションがある。'56年8月14日と18日のセッション、そして「ビリーのマラソンセッション」と言われる’57年1月3日から9日までの土日を除く5日間のセッションである。これらのセッションは、生前3枚のアルバムに分散されて収録されていた。All or Nothing at All, Songs for Distingue Lovers(邦題『アラバマに星落ちて』), Body and Soul であるが、この3枚を2枚組にまとめ、なおかつ吹き込み順に並べた好アルバムを紹介する。

タイトルは1枚目のアルバムと同様 All or Nothing at All。Disk1には'56年8月14日と18日、および'57年1月3日と4日の15曲が収められている。

1. Do Nothin' Till You Hear From Me
2. Cheek To Cheek
3. Ill Wind (You're Blowin' Me No Good)
4. Speak Low

5. We'll Be Together Again
6. All Or Nothing At All
7. Sophisticated Lady
8. April In Paris

9. I Wished On The Moon
10. Moonlight In Vermont
11. A Foggy Day

12. Didn't KNow What Time It Was
13. Just One Of Those Things
14. Comes Love (Alternative Take)
15. Comes Love

まず8/14の演奏であるが、選曲がよい。スイングテンポの "Do Nothing," アップテンポでビリーも後半アドリブを展開する "Cheek," バラードの "Ill Wind," そしてラテンで演奏される "Speak Low" である。声がだんだんきつくなっていることが痛い程分かるが、どれも楽しく、そして心を打つ歌唱であり、バックミュージシャンのソロである。

18日の4曲で特筆すべきは6曲目のタイトル曲、 "All or Nothing" である。この頃になると彼女は狭まった音域をカバーするために、時に語るような歌うような節回しをするところがある。この曲のサビに聴かれる節回しがまさにそれであり、この特質は年を追うごとに強まり、『レディー・イン・サテン』に至るのである。また7曲目のエリントンナンバーに聴かれるベン・ウェブスターのソロは絶品であり、同曲のテナーソロの中でも1,2を争う。それもそのはずで、ソフィスティケイティッド・レディーと言えばエリントン楽団のバリトン奏者ハリー・カーネイだが、彼のコッテリとしたサウンドに合うように作られたこの曲を、テナーの中ではかなりのとんこつ派というかコッテリ派のベンに合わないわけがない。

'57年に入ってからのセッションでは、10曲目「ヴァーモントの月」などもはや出すことの出来ない高域を補う工夫がされていたりするが、1月4日のセッションではかなり調子がよく、「時さえ忘れて」も「ジャスト」もヴァースから歌い、ソロを挟んだ後半では「あの頃」のような独自のタメと後乗りでスイング感も満載である。そして "Comes Love" 別テイクを含むこの曲は、「ビリーのマラソンセッション」中でも最高の出来を示した1曲である。

Disk2の各曲については、いずれまた(っていつになるやら・・・)



オリジナルがいいという方のためには。
posted by G坂 at 00:42| Comment(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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