2008年02月08日

Oscar Peterson: The Way I Really Play (MPS)

The Way I Really Plays

昨年12月にオスカー・ピーターソンが亡くなりました。彼はライオネル・ハンプトン、ベニー・カーターと並んで、決して亡くなることはないジャズマンと思っていたのでびっくりしました。もっとも82歳ということで、あの巨躯を支えて来たことを考え合わせれば、大往生といえるのではないでしょうか。オスカーPの作品は枚数も多いので、今回は特に私の好きな1枚を紹介します。

この The Way I Really Play(邦題『オスカー・ピーターソンの世界』)はMPS (Music Productions of Stuttgart) 時代の最高傑作として評判の高いアルバム。さらに、このレーベルは音がよいので、ピーターソンのテクニックが余すところなく捉えられているといわれています。録音は1968年4月、ドイツ、フィリンゲン。ハンス・ゲオルク・ブルナーシュワー・プライベート・スタジオというドイツらしく長い名前のスタジオ録音ですが、スタジオ・コンサート風にリスナーが入っていて拍手などが聴こえます。メンバーはピーターソンのほか、サム・ジョーンズ(b)、ボビー・ダーハム(ds)のピアノ・トリオ編成。

1曲目 "Waltzing Is Hip" はタイトルどおり3拍子の曲ですが、ピアノのレンジをフルに使ったダイナミックで乗りに乗った演奏と、それをしっかりと捉えた録音に驚きます。このガンガンに飛ばす高テンションの1曲目から、実にリラックスしたムードの2曲目 "Satin Doll" へと繋がるところが特に好きで、何度もテープを逆戻しして聴いたものです。

実はこのアルバム、中学生の頃に近所のレンタル・レコード店で借りてテープにダビングして、そのテープを長い間聴いていました。思い返すと、当時はレコードをレンタルしていたんですね。CDとは比べ物にならないほど繊細な扱いを要求するレコードで、こちらも出来るだけ傷をつけないように「お借り」して、家に帰るとすぐにテープにダビングして、再び仕舞い、翌日返しに行ったわけです。とはいえ、私がレンタルで済ましたジャズ・レコードはこれぐらいしか覚えていないので、ジャズ・コーナーはあまり充実していなかったんじゃないかと思います。当時猖獗をきわめていたフュージョンなら割とあったのかもしれませんが、今と違い不寛容だった当時は見向きもしなかったので覚えていません :D

その「サテン・ドール」が、リラックスしたムードで実によい。10分近い演奏なんですが全く飽きさせることなく、ピアノを目一杯に使ったフルレンジのオーケストラルな演奏から単音でシンプルに展開するソロ、可憐な音使いで小さく花を咲かせたと思えばブルージーにやくざな音を多用してみたりと、自在にピアノをコントロールしています。「この時間がこのまま続いてくれれば」と思わせる素晴らしい演奏です。ただし、キース・ジャレット顔負けの唸り声が入っています 8)

3曲目は "Love Is Here to Stay" 。ライナー・ノーツでいソノてルヲさんが「アート・テイタム風のイントロ」と書いていますが、全くその通りで華麗に球を転がしています。リズムが入ってくるとミディアム・テンポになりテーマを終えた後のアドリブは、これまたジャズ・ピアノのショーケース。「サテン・ドール」ほど長くありませんが、よくまとまった作品です。4曲目の "Sandy's Blues" はピーターソンのオリジナル。「サンディー」とはサンドラ夫人のこと。タイトルどおりのブルースで、リラックス・ムードが横溢しています。途中からテンポアップしてブギ、速弾き、コード弾きと様々な技巧を駆使してエリントンが呼んだように「鍵盤の大王」の貫禄を見せつけ、再びテンポを落としてブルースになります。この辺の緩急のつけ方も心憎い1曲。

5曲目はディズニー映画の名曲 "Alice in Wonderland"。1曲目と同じくワルツです。ビル・エバンスもこの曲で名演を残していますが、聴き比べればジャズ・ピアノ2大スターの個性の違いがよく分かるでしょう。ラスト・ナンバーは再びOPオリジナルで "Noreen's Nocturne"。ノクターンとは名ばかりで、夜にかけたら目が覚めてしまうほど景気のいい曲。サム・ジョーンズがギリギリとベースを掻き鳴らし、ボビー・ダーハムが太鼓を連打して演奏を盛り上げています。

私も現在はテープでなくCDでこれを楽しんでいます。

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2008年02月06日

Herbie Hancock: Possibilities (Hancock Music)

possibilities

ハービー・ハンコックのライフワークの1系統として、ティンパン・アレイや40〜50年代ジャズ曲からの脱却というか、新しいスタンダード(ニュー・スタンダーズ)の追求というのがあるような気がします。これはハービーさんの師匠マイルスが推し進めていたもので、特に『ユア・アンダー・アレスト』にその姿勢が集約されていますが、従来のスタンダードではなく、かといってオリジナル曲でもない、ニュー・スタンダードを創出しようという流れをハービーさんが受け継いでいるような印象です。

今回紹介する『ポッシビリティーズ』も、このニュー・スタンダード系統のアルバムです。各曲にそれぞれゲストをフィーチャーして従来のスタンダードとは一味違った曲を取り上げ、その「可能性」を追求しているわけです。

1曲目 "Stitched Up" でフィーチャされるのが、ブルース歌手のジョン・メイヤー。こてこてのブルースではなく、白人のソフィスティケーションが入った聴きやすいブルース。歌が終わった後に出てくるハービーさんのソロはしつこい畳みかけでブルース・フィーリングがあふれるモノ。そのままフェードアウトします。2曲目の "Safiatou" のゲストは、ギターのカルロス・サンタナとペナン出身の歌手アンジェリーク・キジョーです。サンタナの南米的な情熱あふれるギターとメランコリックな声のキジョーとの掛け合いで歌が進み、ハービーのソロも二人のムードを引き継いだメランコリックなものになっています。

3曲目の "A Song for You" はレオン・ラッセルの名曲で、カーペンターズやカーメン・マクレエの名演が残っています。ここでのゲストは美人で、昨年は妊婦ヌードで世間を騒がせたクリスティーナ・アギレラ、しかし上手い歌手ですね。このアルバム中のベスト・トラックといってもいいような歌ですが、こう感じるのは私がとりわけこの曲を好きだからかもしれません。4曲目はポール・サイモンの曲で "I Do It for Your Love"、ゲストもポールです。元の歌を知りませんが、思いっきりジャズになっていて、歌+伴奏ではなくポールもヴォーカル・セクションを受け持っているといった感じです。

5曲目の "Hush, Hush, Hush" は黒人霊歌かと思ったら、ポーラー・コールという人の曲。歌はアニー・レノックス、スコットランド出身の歌手だそうです。そして6曲目、ニュー・スタンダード物の常連さん、21世紀のガーシュウィンかコール・ポーターかといった風情のスティングが登場します。曲は "Sister Moon"。カサンドラ・ウィルソンみたいな声で歌っています ;) この人はもともとジャズとの親和性が高いので、当たり前といえばあたりまえですが、ジャズとして素晴らしいトラックになっています。

7曲目はブルースのジョニー・ラングとイギリスのジョス・ストーンがゲストで、 "When Love Comes to Town"、U2の曲だそうですが、ベタのブルースですね。後半どんどん盛り上がっていき、ハービーさんのソロでクライマックスに達します。8曲目はビリー・ホリデイの名曲 "Don't Explain"。フィーチャーされているのはアイルランドのダミアン・ライスとリサ・ハニガン。なんか辛気臭い演奏です :cry:

9曲目はスティーヴィー・ワンダーの名曲 "I Just Called to Say I Love You"。ゲストはラウル・ミドン。盲目の歌手だそうです。そしてハーモニカでスティービーご本人も参加しています。しかし、この歌手、素晴らしい声です。スティービーのハーモニカも優しく美しい曲に仕上がっています。最後は "Gelo na Montanha - 第一楽章"。作曲とゲストはフィッシュのメンバートレイ・アナスタシオ。エコロジカルな音楽みたいです。

個人的な好みでは、1、2、3、4、6、7曲目のようなコクのあるトラックが気に入りました。

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2008年02月03日

Kenny Burrell: Midnight Blue (Blue Note)

midnightblue

今から10年ほど前、東芝EMIでは "24bit by RVG" と銘打って、ブルーノートの名盤を名録音エンジニア、ルディー・ヴァン・ゲルダー(RVG) によるリマスタリングでCD化し、紙ジャケット仕様で発売していました。と言うより、もう10年も前になるんですね。ライナーの裏に第1弾発売が1998年7月となっているのを見て改めて気づきました。なんだかつい最近の出来事だったような気がしていたんです。昨年からプラケース仕様ではあるけれど、再びRVGリマスタリングが再発されています。

このリマスタリング・シリーズでも、ヴァン・ゲルダー本人が会心の出来であると語っているのが、今日紹介する『ミッドナイト・ブルー』です。録音は1963年1月7日。リーダーはケニー・バレル(g)で、他にスタンリー・タレンタイン(ts)、メジャー・ホリーJr.(b)、ビル・イングリッシュ(ds)、レイ・パレット(conga)という60年代ブルーノートの色彩が濃いメンバーです。

1曲目の "Chittlins Con Carne" はケニー・バレルのオリジナル曲で、このアルバムの顔とも言うべき曲です。最近「大和証券」のCMに使われましたが、イントロが長いので30秒CMでもほとんどがイントロに費やされ、テーマが出て来るのはCMの終わりぐらいということになり、それが却ってこのCMを印象的なものにしています。曲として聴く分にはそんなに長く感じるイントロではないのですが、CMの時間枠の中では長く感じるものなんですね。しかし名曲です。2曲目の "Mule" はブルース。ゆったりとしたスローブルースで黒々としたフィーリングが横溢しています。スタンレーが名ソロ。3曲目の "Soul Lament" はバレル・オリジナルのバラードで、ソロ・ギター。バレルの特色がよく分かる演奏に仕上がっています。4曲目でタイトル曲の "Midnight Blue"、5曲目の "Wavy Gravy"もバレル作曲のブルース。6曲目の "Gee Baby" は一応スタンダードですが、これもブルースの雰囲気を持った曲です。最後の曲 "Saturday Night Blues" も当然ブルース。スローなシャッフルのリズムに乗って各人がレイドバックしたソロを取ってゆきます。

いつもならば1曲ずつソロ・オーダーを書いたり、寸評を加えたりするのですが、このアルバムに関してはそういうことが余計に思える。と言うのも、このアルバムは全体で一つの曲、つまり『ミッドナイト・ブルー』という曲であり、一つ一つのナンバーはその楽章という感じがするからです。それほどまでにカラーがブルース一色に統一されたアルバムです。この頃から、いわゆるグルーヴ物と呼ばれるもう少し饐えた感じの退廃したアルバムが出てくるわけですが、この作品は饐える直前の熟成感が堪えられない名盤だと思います。

posted by G坂 at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月01日

Clifford Brown: New Star on the Horizon(Blue Note)

new star

日記ブログのほうで『美味しんぼ』の記事を書きましたが、その際10インチ盤について言及しました。レコードのLPにはサイズで12インチ(30cm)と10インチ(25cm)があり、初期のジャズLPには、よくこの10インチ盤が用いられていました。しかし12インチに比べると、当然ながら収録時間が短く、アドリブの発達とそれに伴う収録時間の延長化によって12インチが主流になっていったわけです。

この10インチオリジナルは、おそらくコレクターという人々からすると垂涎の的なのでしょうが、私はそれほど興味がありませんでした。しかし、数年前東芝EMIからブルーノート(そして後にはベツレヘムなど他レーベル)の10インチが復刻されたことがあり、その際にできるだけ持っているCDやレコードと重複しないように集めたことがあります。今回紹介する『クリフォード・ブラウン―ニュー・スター・オン・ザ・ホライズン』もそのときに買った一枚です。しかし、これはBNのクリフォード関係をまとめた名盤『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』と重複しまくり、というか全曲が納まっています。この10インチ復刻は完全予約制で、私もカタログを見ながら被らないように被らないように注文し、その時点ではこのアルバムを当然除外していました。それで当日品物を取りに行くと、いろいろよくしてくれていた店員さんが「私は『クリフォード』を一枚買いましたよ」といって見せてくれたわけです。実物を見ると、しかしなんとも欲しくなるもので「やっぱり僕も注文しておけばよかった」と言うと、「お譲りしますよ」とのこと。そのまま買って帰ったというわけです。

録音は1953年8月28日。メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ジジ・グライス(as, fl)、チャーリー・ラウズ(ts)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds)のセクステット編成。
A面1曲目は "Cherokee"。"All the Things You Are" や "How High the Moon" と並ぶバップの聖典です。曲の最初と終わりにアレンジがありますが、あとはクリフォードのソロ。1コーラス目はジョン・ルイスのピアノが弾くチェロキーのメロディーの上空でブラウニーのペットがアドリブを炸裂させます。後にブラウン〜ローチ双頭クインテットで絶世の名演を繰り広げるこの曲は、その演奏の冒頭でハロルド・ランドとブラウニーが互いに半コーラスずつメロディーとアドリブを対位法的に吹き分けています。その原型は実にここにあるわけですね。1コーラス目のサビに入ったところはパーカーの影響がもろに出ています。2コーラス目。ピアノがコンピングに変わり、より自由に飛翔するブラウニーが聞けます。2曲目の "Easy Living" がこれまた名演。ちょうどストリングスのようにアレンジされたバックを従えて、素晴らしいバラード演奏を繰り広げています。途中ダブルテンポになるところでナミダモノのフレーズが出ます。3曲目は クインシー・ジョーンズの "Wail Bait"。ラテンリズムのイントロに続いて整然としたアレンジのテーマが演奏されます。ソロの先発はジョン・ルイス。続いてジジのアルト。再びテーマが繰り返されたあと、満を持してブラウニーの輝かしいソロが炸裂します。次がラウズのテナーですが、やはりブラウニーには誰もかなわない。

B面1曲目はクリフォードのオリジナルで "Minor Mood"。イントロは冒頭がメジャーなのにマイナーになっていく不思議な曲想。テーマは『クールの誕生』の "Jeru"に似たようなメロディーで、ちょっとトリスターノ楽派の風味も入っています。そのせいかブラウンのソロも長く起伏に富んだホリゾンタルなライン。続くジジ、ラウズのサックスもそうで、なんだかリー・コニッツのセッションを聴いているような感じがします。2曲目の "Hymn of the Orient" はジジ・グライスの曲。哀愁のあるテーマです。ブラウニーが先発。曲の哀感を保ったまま目くるめくソロを展開します。ラウズとジジは半コーラスずつソロを取り、ピアノのジョン・ルイスが美しいソロを取ります。ドラムと各楽器との4バースを経て後テーマになだれ込みます。3曲目の "Brownie Eyes" はタイトル通りクリフォードのペットを全面にフィーチャーしたクインシーのバラード。A面の「イージー・リビング」と対になるような名バラードです。

最近このジャケット・デザインで『メモリアル・アルバム』が再発されたようです。しかも別テイクを含めると計18曲、3倍も入っています。『メモリアル・アルバム』は従来のジャケット写真のほうがよいような気もしますがRVGリマスターということで、音質も楽しみです。

posted by G坂 at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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