2007年07月31日

Herbie Hancock: Empyrean Isles (Blue Note)

Empyrean Isles

ハービーさんによるこのアルバムは、B面1曲目の "Cantaloupe Island" にその人気の原因があるように現在では思われていますが、これは折からのグルーヴ物ブームでUS3によるサンプリングが売れまくったことがきっかけです。ジャズ業界にはこういうことに弱い体質があって、普段ポップスを邪険にしている割りに、ポップス側から火がつくとそれに乗っかって「さあクラブ・シーンではカンタロープだよ」とか「今日はクラブでアフロディジアを踊ってきたよ!」と、踊るクラブと銀座のクラブの違いももわかっていなければ踊りといっても盆踊りぐらいしか経験したことないような評論家まで言い出すところがあります。私も一、二度踊るクラブに連れ出されたことがありますが、あんなのうるさくてがさつなだけで何処がいいのか分からない。大体難聴になりますよ、あんなに耳を聾する環境に長時間いたら。などと踊るクラブのほうに文句を言っても仕方がないのですが、若者が気に入る=いいものであるという、50年代以降の大量消費の必要性から大資本によって延々と馴致し続けられた若年脆弱文化へ擦り寄る(なんのこちゃ?)ような態度に対しては、「なんだかなー」という気持ちをずっと持っていました。本当はもっと単純に「むむ、息子ぐらいの世代が興味を持ってくれている、うれしいね」ということなんだろうから、無理やり目くじらを立てる必要はないんですけれど、あえて立ててみました。

というのも、このアルバム、やっぱりソロが爆発しているのはモーダルな1曲目 "One Finger Snap" だと思うからです。メンバーはフレディー・ハバード(tp)、ハービー(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)ということで、マイルスの第2次黄金カルテットのリズムにフレディーのペットが乗っかっています。フレディーはテクニックがあるのに、時々無味乾燥なフレーズを連発して聴く者をうんざりさせる傾向がありますが、ここでの演奏はすごい!びしびしフレーズが決まっていきます。その句読点を演出するのがトニーの太鼓の連打。続くハービーもジャズ・ピアニストとしての実力を遺憾なく発揮しています。モーダルな曲の曲想というのは意図的に結節点をつけていかないと、とめどなく横に流れていくので、実はバップ以上に歌心というのかフレーズ感覚が優れていないと「冷たい音の上下」に堕してしまうことがあるんですね。ここではそうならずに、意味のあるフレーズの連続となっているところが彼らのセンスでしょう。マイルスの『ESP』などで訓練された結果が十分に出ています。

続く "Oliloqui Valley" も彼らのコンセプトを十分に出したものですが、リズムに変化があるのでもっと曲想にメリハリがあります。ハービーのソロから始まり、フレディーに引き継がれますが、よく歌うソロです。その後ロン・カーターの理屈っぽいベースソロに受け渡されテーマに戻ります。1曲目の「ワン・フィンガー・スナップ」がすごいと言うべき作品であるのに対し、「オリロキ・ヴァレー」は好ましい作品という感じです。

そして3曲目 "Cantaloupe Island"。「カンタループ」とはメロンのこと。「ウォーター・メロン・マン」といい、ハービーさんはメロンが好きなのだろうか?ファンキーな曲調でフレディーがいつになく語尾をクイクイ上げてリー・モーガンみたく吹いています。確かに聴きやすく、乗りがよく、印象的な演奏です。ライナーノーツによるとハービー自身90年代のリバイバルに触発されてこの曲を見直し、ライブの必須レパートリーにしたそうです。

最後の "The Egg" はフリージャズです。ただフレディーがトナリティーの重力を感じさせるので、フリーと調性内のギリギリを彷徨っている感じ。ハービーのピアノをはじめ、リズムはフリーフォームで演奏しています。ロン・カーターのソロはアルコでやっぱり理屈っぽく、ハービーは現代音楽のようなソロからはじめ、ドラムが入ってきてテンポを動かしながら多面的な曲調を弾き分けています。私などのような4ビート信者は4ビートを待ち遠しく思いながらフリーの部分を耐え忍び、4ビートの片鱗が出てきたときにヨロコンデいるといった一種変態的な聴き方をしています。トニーのよく分からないソロの後、テーマに戻って終わります。

「カンタロープ」のイメージだけに囚われぬように今回聴き直してみて、ずいぶんと再発見がありました。下に紹介するCDは最近の再発で、お蔵入りテイクが最後に追加されているようです。

posted by G坂 at 22:32| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月30日

Billie Holiday: The Very Best of Billie Holiday

ken burns billie

ビリー・ホリデイがなかなか紹介しづらい歌手であることは以前に述べ、またDVDでいわゆる「伝説」を払拭してから聴いたほうがいいと書きましたが、今回はベスト集を紹介したいと思います。

ビリー・ホリデイは大きく分けると3つの時期、細かく分ければもっと細かい時期に分かれますが、ブランスウィック・セッション期〜デッカ・コモドア期〜ヴァーヴ期というのが見やすい分け方でしょう。私が個人的に好きなのはブランスウィック・セッションの時代で、この頃は特に大スターでもなく、ホーン奏者の一員となってセッションに参加しているわけです。これはある程度ジャズなり音楽なりを聞き込まないと見えてこない。感性といっても所与のものではなくて諸経験の総体ということです。この時期のビリーは楽器と同じようにアドリブをしているし、それがスキャットによらず歌詞のままのアドリブなので、元歌を知っていることと英語がある程度わかることが必須になってくるからです。それに比べるとデッカ・コモドア時代、そしてヴァーヴ時代はニュアンスとか声質といったもっと深いレベルでもたらされる感動なので言語や経験の枠を超えているのです。

今日紹介するアルバムを私は持っていませんが、それぞれの音源は持っていて聴き込んでいます。この「ケン・バーンズ・シリーズ」はなんとなく終了の方向なので、現物が買えるいま紹介しておこうと思ったわけです。ここにはブランスウィックからデッカ・コモドア時代、ヴァーヴ時代、そして最晩年のコロムビアでの吹き込みが収録されています。これで大体ビリーの全容が分かると思います。

1,2,3曲目はブランスウィック・セッションから。どれも名演ですが特に3曲目の "Me, Myself, and I" は、よくぞ入れてくれたというほど、知る人ぞ知る本当の名演です。2コーラス歌うのですが、2コーラス目のアドリブがすごい。元歌よりも乗りに乗ったメロディーで、信じられないような「ずらし」をやっています。譜面として書けばマーヴィン・ゲイの "Sexual Healing" をその場でやった感じで、まあ精緻を極めたリズムの彩を繰り広げています。

5曲目の "Strange Fruit" は言わずと知れた歴史的名演。私も授業でこれを聞かせることがあるのですが(嫌がらせではないです :-p )、自叙伝の記述ではないけれどシーンと波を打ったように静かになります。私個人としてはそれほど好きじゃない歌なんですけれどね。

8曲目の "Solitude"。エリントンの曲で、「ソリチュード(孤独)」を歌った歌なのですが、これはすごい。デッカでの吹き込みだと思われますが、この曲としてはロリンズの「ウェイ・アウト・ウェスト」と並び称される名演です。ビリーの特質は私などが語るよりも、桑田圭祐の「星空のビリー・ホリデイ」を聴いていただければ分かるのですが、「呟くような」歌い方なんですね。12小節の純ブルースを歌うことは少なかったのに「ブルースを歌うレディー」と言われたのは、この歌い方とちょっとフラットがかった音程が大きく関係しています。そのせいでどの歌もブルースのフィーリングが溢れているからです。

ビリー自作の曲が9曲目 "God Bless the Child" です。邦訳は「財は自ら築くべし」、母親からお金を無心された時に口をついて出たことわざ、"God bless the child that got his own" (自分の分を自分でとるものを神は祝福する)から膨らんでいった曲だと自叙伝では語っています。こういうテーマは古いブルースにはよくありましたが、ここでは12小節ではなくて、サビを持った32小節の歌になっています。それでもテーマといいフィーリングといいブルースが漲っているわけです。これは各時代にまたがって吹き込んでいますが、これもデッカ時代の吹き込みです。私が一番好きなのはヴァーヴでの吹き込みです。

13,14曲目の "Lover Man" と "Don't Explain" はデッカの名演でしょう。この頃からビリーは自分の特質が「トーチ・ソング」にありと自己定義をしていきます。トーチ・ソングとはトーチ(松明)のように身も心も焦がす愛の歌のことですが、そのせいでテンポは遅くなりアレンジは重厚になり、ジャズ的な魅力からはちょっと遠ざかるのが残念です。しかし、この時期のビリーが一番円熟しているとも言われます。

16曲目 "Autumn in New York" は、ヴァーヴ時代。この時期だと、私としてぜひ入れて欲しかったのが "Please Don't Talk about Me When I Was Gone"。 まるでブランスウィック時代に戻ったかのごとき奔放なアドリブが聴けます。

18曲目の "Fine and Mellow" はテレビ用の吹き込みでしょうか。ステレオ録音で往年の名手たち、つまりコールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスター、レスター・ヤング、ロイ・エルドリッジらと吹き込んだ演奏だと思います。テレビ映像のバージョンだとコールマン・ホーキンスの姿は見えるのですが音は聞こえません。しかし音声バージョンだとしっかりソロを取っています。また、この吹込みでは冒頭にビリーのアナウンスが聞けます。

そして最後、19曲目 "You've Changed" 。『レディー・イン・サテン』というアルバムからです。サテンと言うタイトルとは裏腹にザラザラした声になってしまったビリーが涙を誘います。バックのストリングスが美音なのでなおさらビリーのかすれて駄目になった声との対比が際立ちます。しかしパーカーのラバーマンセッションと同じく、それでも感動させる天才の不思議さを感じさせる優れた演奏だと思います。


posted by G坂 at 17:08| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月29日

NHK-FM Weekend Jazz (最終回)

こちらがテープB面のデータです。

NHK-FM Weekend Jazz (最終回)
リクエスト特集 (ミニミニジャズの歴史)
DJ: 襟川恵子(クロ)
構成:いソノてルヲ
1980年4月


1. West End Blues (ルイ・アームストロング)
これは『ルイ・アームストロングの肖像』(CBSソニー)という1928年の名演を集めたアルバムで聴いていました。

2. Star Dust (ベニー・グッドマン)
これをリクエストしたところ、FM誌の放送予定にこの曲目が書いてあったので録音することにしたわけです。再生して自分の本名が呼ばれるのを聞いて気恥ずかしい気持ちになりました。

3. This Can't Be Love (アート・テイタム・トリオ+ライオネル・ハンプトン)
テイタムを聴くのはこれがはじめて。ものすごいバカテクのピアノだなという印象でした。

4. Fiesta Mojo (ディジー・ガレスピー)
カリプソのアルバム『ジャンボ・カリベ』からの1曲で、ディジー初体験でしたが、まさかこの後にパーカーを聴くことになるとは思いもしませんでした。まだ、図鑑か何かで名前を知っているだけの二人だったわけです。

5. Cute (アート・ヴァンダム)
アコーデオン・ジャズ。こういう世界もあるのかと思いましたが、それよりも "Cute" という曲が気に入りました。

5. April in Paris (チャーリー・パーカー)
6. April in Paris (スーパー・サックスによるパーカーのアドリブのユニゾン)
もしこの時流れたのが "Ko-ko" だったらどうだったでしょうか?初心者に分かりやすいストリングス物なのでパーカーのラインもくっきりと聴こえ、おまけにスーパーサックスが同じアドリブ・ラインをサックス・ユニゾンで吹いたものを流してくれたため、「あ!これは今まで聴いていたスイングバンドとはずいぶん違うぞ」ということが容易に分かりました。早速パーカーの『ウィズ・ストリングス』を買って聴きました。だからやっぱり初めてのパーカーにはこのアルバムがいいんじゃないかと思うのです。

7. Blue for Players (スコット・ハミルトン)
いま振り返るから分かることですが、当時4ビートが袋小路にはまり込んで、若手がみなフュージョンへ流れていく中、ジャズ・ジャーナリズムはスコット・ハミルトンを盛んに持ち上げていました。この後リッチー・コールも同じように持ち上げられますが、おっちょこちょい以外はついていかなかったように思います。私もおっちょこちょいでは人後に落ちませんが、リッチー・コールはさすがにまったく買いませんでした。そして、ウィントン・マルサリスが出てくるんですが、彼は4ビートのわりにジャズ・ジャーナリズムでは賛否両論だったように記憶しています。

8. I'll Remember April (渡辺貞夫)
最初に『カリフォルニアシャワー』のリクエストが読まれたのに、いソノさんはフュージョンのリクエストを軽く無視して、ナベサダのバップをかけているわけです。もちろんそんなこと当時はよく分かりませんでしたけれど。

この頃は曲の背景やら何やらを説明し、アーチストと曲名を言って、それからポーズをあけて曲を流していましたね。「エアチェック」という趣味があったからでしょう。最近のFMはアメリカンスタイルというのか、トークのバックから曲が流れ始めたりドドドっと曲を連続して流したりして、完全にBGM化しているようですね。この前AMのTBSラジオでやっていた「Taboo Songs〜封印歌謡大全」が昔ながらのスタイルで懐かしかったです。

参考CDはAmazonのアフィリエイトプログラムが不調なようなので、いずれ落ち着いたら紹介します。
posted by G坂 at 00:48| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月28日

NHK 特集サウンド・オブ・ポップス 第2回:スイングアルバム

memorial tape

このホコリだらけというより、「ホコリ叩いてみろテープごと無くなっちゃうから」というほど汚れたテープについては、以前日記ブログの記事で書きました。その際は概要について書いただけなので、今回はその内容についてA面B面2回に渡って紹介したいと思います。ここではA面について。

NHK-FM 特集サウンド・オブ・ポップス
This Is Jazz! 第2回 Swing Album〜華麗なるキング・オブ・スイング ベニー・グッドマン
解説:本多俊夫
1979年


この頃はNHKもクラシックとそれ以外のポップスという枠組みだったようで、サウンド・オブ・ポップスという番組の特番でジャズが流れていたようです。

オープニング: St. Louis Blues March (ウェルナー・ミューラー楽団)
このシリーズでは各スタイルのアレンジや解釈を施された「セント・ルイス・ブルース」がオープニングで流され、この界は「スイング時代」がテーマだったのでこの曲でした。

1. Let's Dance! (ベニー・グッドマン楽団)
2. Don't Be That Way (ベニー・グッドマン楽団)
ストックホルムコンサートのもの。今聞くとあまりぱっとしませんが、当時は魅せられました。

3. Somebody Stole My Gal (ベニー・グッドマン楽団)
キャピトルに吹き込んだ演奏。この曲は吉本新喜劇のテーマ曲でもあるんですよね、あの「ホンワカホンワ〜♪」ってやつ。

4. Star Dust (ベニー・グッドマン楽団) スイングスタイル
5. Star Dust (アーティー・ショウ楽団) バラードスタイル
6. Star Dust (北村英二によるアーティー・ショウのクラリネット・ソロの部分)
これは「スターダスト騒動」の前に聴いたものです。

7. Where or When (ペギー・リー+ベニー・グッドマン)
8. On the Sunny Side of the Street (ペギー・リー+ベニー・グッドマン)
『ペギー・リーの肖像」というアルバムに入っています。これは今聴いてもいい演奏。

9. Memories of You (ベニー・グッドマン+チャーリー・クリスチャン)
チャーリー・クリスチャンもここではじめて聴きました。

10. Weber Clarinet Concerto No. 2 (ベニー・グッドマン+シカゴ交響楽団)
出た!旦那芸。

11. Sing, Sing, Sing (ベニー・グッドマン楽団)
カーネギーホール40周年記念コンサート。ベニーは衰えていますが演奏全体はよい。

12. Good Bye (ベニー・グッドマン楽団)
冒頭のストックホルムコンサートから、クロージングシーム。

もしこのテープを録音していなかったら、今頃ジャズを聴いていることはないのではないかと思います。

下に参考CDを挙げておきます。

posted by G坂 at 21:49| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月27日

Chu Berry: Blowing Up a Breeze

chu berry

チャーリー・パーカーに影響を与えたミュージシャンというとレスター・ヤングが筆頭に挙げられますが、その他にもバスター・ウィリアムスやジミー・ドーシーなどがいます。その中でもパーカーが息子にまでその名をつけるほど心酔していたのがチュー・ベリーです。もちろん「チュー」などという名前をつけたわけではなく、彼のファーストネーム「レオン」を取ったそうです。

特にパーカーが良く聴いていたといわれるのが "Stealin' Apples"、フレッチャー・ヘンダーソン楽団での演奏です。この演奏を捜し求めてネット検索をした結果、すぐに見つけたのが今回紹介するCDです。22曲も入っていて、古い演奏は味が濃いので通しで聴くと疲れやすい。だから聴くでもなく流していて椅子から飛び上がりました!8曲目の "Star Dust"が「"あの"スターダスト」だったからです。

私が高校生の頃、ということはシカゴジャズなんかも探し始めた頃、高校の理科の授業でNHKの教養番組『コスモス』を見せられました。ビッグバン理論かなんかを下敷きにした当時としては最新の宇宙論を紹介した番組です。ダメな高校生だった私は暗い教室を幸いにして居眠りを決め込んでいたのですが、途中で挿入された「スターダスト」で一気に目が覚めました。なんともしみじみして枯れた味わいのトランペットが吹くスターダストのメロディーが実によい。テンポは普通聴くバラード調の「スターダスト」よりも気持ち速め。そしてピアノにソロが移るあたりでBGMが終わりました。

さあ、それからは寝ても覚めても「スターダスト状態」。まずNHKに電話で問い合わせてみると「あの番組は海外のものをそのまま買い付けたので分かりません」とつれない返事。たまたま城達也さんの名番組『ジェットストリーム』で「スターダスト特集」をやるとFM誌(なつかしー)に出ていたので早速聴いてみました。有名なライオネル・ハンプトンのパサディナ公会堂での「スターダスト」、これは違う。エリントンの濁ったようなハーモニーの「スターダスト」、これも違う。サラ・ヴォーンのこねくり回したような「スターダスト」、フシが違うよ。コルトレーンの資質を無視したような「スターダスト」、違いますがなにか?作曲者ホーギー・カーマイケルの「スターダスト」、本当に作曲者ですか?クリフォード・ブラウンの「スターダスト」、上手いのは分かったけど違うよ。どれもこれも違う。そもそもモダンジャズじゃないし。こうなるともう「スターダスト」の入ったアルバムはとりあえず買ってみる、お金はないけれど、という話になり集めはじめます。サッチモの「スターダスト(オーメモリーバージョン)」など有名なので期待して買ってみても、ハズレ。あと有名な「スターダスト」で、まだ聴いていないものといえばビング・クロスビー、チョコレート・ダンディーズ、ジャンゴ・ラインハルトぐらいしか残っていません。これも追々手に入れていくのですがどれも違う。そもそもあの滋味あふれるトランペットは誰だ?サッチモやロイ・エルドリッジ、バニー・ベリガン、ハリー・ジェイムスのような輝かしいトランペットではなくて、もっと地味系のマグシー・スパニアとかジョー・スミスとかではないかと当たりをつけますが、見つかりません。そして忘れかけていた頃、ひょっこり出会ったのが上のCDでした。リーダーがチュー・ベリーなので引っかかってこなかったといえば言い訳ですが、なんと言ってもペットが自分で除外していたロイ・エルドリッジであったことが驚きです。ロイのデッカ盤「スターダスト」はすでに聴いていたのですが、輝かしく高らかな音なので、「これは違うな」と決めてかかっていたのです。

収集の過程で分かったこともあって、「スターダスト」は発表された当時のほうが、むしろテンポが速くインテンポで演奏され、時代が下ってアーティー・ショウのスターダストあたりからバラードとしての解釈が表に出てきて、モダンジャズ時代になるとバラード一色となっていったようです。そしてチュー・ベリーとロイによるこの38年の吹き込みは、当時としては珍しくテンポを落とした演奏です。こうして集めたレコード・テープのたぐいがコレクションのもう一つの骨格をなす「スターダストの系譜」になりました。

このCDもまた、出会ってから約20年後に手元に届いたわけです。

チュー・ベリーはコールマン・ホーキンス系の男性的なテナー奏者で、フレッチャー・ヘンダーソン楽団に在籍するなど活躍していましたが、31歳という若さで亡くなりました。このCDには彼の魅力的なフルヴォイスのテナーがたっぷり収められています。

posted by G坂 at 21:25| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Stan Getz: Getz / Gilberto (Verve)

getz gilberto

ボサノバは人工的な音楽だそうで、'50年代半ばにアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトらによって創り出されたそうです。サンバのリズムと、それとは対照的にクールで内省的なジャズとを融合させることによって出来たボサノバ(新しい感覚)は、1963年ゲッツとジョアン・ジルベルトによるこのアルバムで、逆にジャズに対して大きな影響とブームを引き起こすことになりました。

このアルバムの中でも特に有名なのが "Girl from Ipanema"、ジョアン・ジルベルトのポルトガル語による歌に続いて出て来る、妻アストラッドが歌う英語の歌が面白いわけです。まずたどたどしい英語。英語がヘタだと自ら卑下する日本人だってもう少しは上手く歌えそうなほどローマ字読みしたかのような英語。「ガールフロムイパネマゴースオーキン」ですから。更に「アー」っていう間投詞がなんとも言えずコケティッシュでニュアンスに富み、私たち妄想族の妄想を膨らませるわけです。

と言うようなわけでアストラッド・ジルベルトにばかり注目が集まる(ホントに?)「イパネマの娘」ですが、ここでのゲッツのワンコーラスのソロは一種「テナー奏法のいただき」を極めているような感じがするんですね。まず、全体がサブトーンで構成されている。サブトーンというのは、よくサックスの低音で「ボボボとかズズズ」というように掠れたような音の成分が含まれているのを耳にしますが、あれです。普通は低音で出すものなんですが、ゲッツの場合、中音息から高音域まで満遍なくサブトーンが響き渡っています。

Aメロディーの部分はアドリブというよりも原曲のフレーズを生かしたフェイクのようなソロを吹きます。ここではアーティキュレーションやハーフ・タンギングを駆使し、原曲よりもずっとニュアンス豊かに独特の世界を繰り広げます。そしてサビに入るとコード・チェンジを頻繁にして原曲よりもはるかに美しく、むしろもともとそのフレーズこそここに当てはまるのではないかと思わせるような自然なアドリブ。そして徐々に元歌を思い出させるようなフェイクに戻りたった1コーラスですが驚異的なソロを終えます。私自身このアドリブを採譜したものを手に入れて何度もコピー練習しましたが、いくら吹いても似ても似つかないものになるので泣く泣く諦めました :-(

そのほかにも "Desafinado"、"Corcovado"、"O Grande Amor"などボッサの名曲が目白押しです。 "Desafinado" とは「調子っぱずれ」という意味だそうで、私なども時折ギターでこの曲を弾いてはタイトルに恥じない演奏となっています。

「黒いオルフェ(カーニバルの朝)」も名演なのですが、これは別のアルバム『黒いオルフェ』に入っています。ただ、最近はボッサをまとめたようなアルバムもあるので、そちらで求めてもいいかもしれませんね。

posted by G坂 at 19:54| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月25日

Miles Davis: 'Round about Midnight (Columbia)

round midnight

プレスティッジの契約下にあったマイルスを見初めたコロムビアは、プレスティッジとの再契約を断って自分たちと契約するようマイルスと交渉するとともに、プレスティッジとの契約が失効するまでは発売しないという約束でこっそり録音したものがこのアルバムです。この間の事情についてはCookin'の記事で油井先生の言葉を引用して解説したとおりですが、一番最初の録音が'55年10月27日、以降'56年6月5日、9月10日と続きます。面白いことに、かの第一次黄金カルテット(マイルス、コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ)といえばプレスティッジなのですが、それより早く55年の段階でこのグループが吹き込んでいるわけです。その後のレコーディングを含めプレスティッジの「ING四部作」と時期的にかぶっているわけですが、しかしこのアルバムを他の作品とは違ったものとして際立たせているのは、やはり "'Round about Midnight" の歴史に残る演奏でしょう。

モンクのこの曲に関してはこれ以前にも『コレクターズ・アイテム』というアルバムに吹き込んでいますが、コロムビア盤の集中力と構成力は半端でない。これには新しいレーベルへ吹き込む意欲とともに、アレンジの問題があるように思います。ライナーノーツにある小川隆夫さんの記事には次のように書いてあります。

「確かにあのアレンジはわたしのものだ」。

1983年3月末、ギル・エバンスはミッド・タウンに借りていた仕事場でこう語ってくれた。あのアレンジとはマイルス・デイビスが米コロムビアに吹き込んだ< ラウンド・ミッドナイト>のことである。


以降イントロ、カウンターメロディー、ヴァンプ等々、ギルのアレンジがベースになっていることが語られていきます。ヴァンプに関しては吉祥寺メグの寺島さんが「絶対に許せないあの部分」と酷評していますが、これがないと物足りないという人も多いわけで、確かに『コレクターズアイテム』における同曲にはこのヴァンプがないので、その辺に差し掛かると「あらっ?」となります。

私などは朝の通勤でもこれを聴いてしまうようなところがあるのですが、やはりこの曲のムードはタイトルどおり夜です。ただ、ヴァンプとコルトレーンのソロは夜流すにはちょっとうるさい気もするので、ボリウムに注意。特にSMEの新しいリマスター盤は音が濃厚になっているのでジャズの醍醐味は十分あるけれど音量には要注意です。

2曲目の "Ah-Leu-Cha"。Charlieを逆さ読みしたタイトルで、もちろんパーカーの曲、サヴォイ・セッションに入っていて、こちらでもマイルスがテーマを吹いていました。ジャズには珍しく対位法を用いたテーマでもと歌は"Scrapple from the Apple" と同じ "Honeysuckle Rose" です。今回はコルトレーンと対位法で絡み、ドラムソロも入るテーマ処理。ビバップの香り全開ですがアレンジの巧みさなど、このグループがすでにグループとしてまとまっていたことを示していると思います。

3曲目の "All of You" と4曲目の "Bye Bye Blackbird" はどちらも歴史的名演で、その理由はこのアルバム以降に吹き込まれた2曲は、必ずといっていいほどここでの解釈に影響を受けているからです。ちなみにマイルスは "Blackbird"(クロツグミ)と呼ばれると激怒したそうで、じゃあこの曲の話題はどうやって振ればいいんだって話になりますが、「過去を振り返らなかった男」のことですから、話題に出されても無視していたんでしょう。

5曲目 "Tadd's Delight" はビバップ期に活躍した作曲家タッド・ダメロンの作曲、エネルギッシュな演奏です。そして最後の曲が "Dear Old Stockholm"。スタン・ゲッツの決定的な解釈がありますが、これまたもう一つの代表的解釈で多くのミュージシャンに影響を与えています。これはもともとBNに吹き込んだバージョンを拡大したものですが、静のマイルスに動のコルトレーンという対比が面白く素晴らしい演奏になっています。

以前は「マイルスで最初に買うなら『リラクシン』だ」と言っていましたが、それはコロムビア盤の音が薄かったからです。リマスターでずいぶんと厚い音に仕上がっているので、こちらを最初に買ってもいいかもしれません。

posted by G坂 at 23:55| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月24日

Eddie Condon: Chicago Style (Living Era)

chicago style

私の場合ジャズコレクションは様々なガイド書で「名盤」と太鼓判を押されたものをとりあえず買い求めて聴き、その結果興味を抱いたアーティストたちを掘り下げていく感じで進めているのですが、それとは別系統の大きな骨格があります。「シカゴ・ジャズ」といわれる古い人たちの録音です。もう一つ「スター・ダスト」の系譜というのがありますが、それはまたいずれ書きましょう。


そのまんま東の別れた女房で、東国原英夫宮崎県知事の元夫人(って同じことですが)のかとうかずこさんが『なんとなくクリスタル』で一躍脚光を浴びた80年代に、彼女はグリコの『カフェゼリー』という今でも売られている息の長い商品のCMに出ていました。そのCMのBGMで流れていたジャズがとてもよい。ベニー・グッドマンのように流麗なクラリネットではなく、スイング以前のもっと古い感じ。かといってニューオリンズジャズのような玄人っぽさもなく、いったいどういう人のどういう曲かと思ってグリコに電話してみると、「調べてみます。分かったらテープに録って送りましょう」と色よい返事。ところが待てど暮らせど連絡なし、当然テープなど送ってこない。今ならばネットでササッと検索したり、メールで「どうなっていますか?」と尋ねられますが、当時は電話なので気が重いわけです。仕方無しに色々文献を当たってみると、これはシカゴ・ジャズというジャズの一スタイルではないかとおぼろげながら分かってきました。

このスタイルはシカゴのオースチン・ハイスクールの白人高校生や仲間が始めたジャズで、黒人ジャズを見よう見まねで真似たもの。しかししょせん素人に毛の生えたような連中なので、上手いわけでもなければ特別クリエイティブなわけでもない。しかし、ここにいた連中がつまり、エディー・コンドンであり、マグシー・スパニアであり、バド・フリーマンであり、ジーン・クルーパーであり、メズ・メズロウであったのです。後のスイング時代の大物たちです。つまり、シカゴ・ジャズとは大物ミュージシャンが若い頃の未熟なスタイルが独特のテイストをかもし出した、一種のヘタウマジャズだったわけです。そして、このスタイルを余すところなく収めているアルバムはCBSソニーの『シカゴスタイル』ということまでは突き止めました。

ところがこのLPといったら、廃盤になって久しくどこへ行っても見当たらない。また絶対このレコードに入っているという自信もない。おまけに曲がなんだか分からない。ないない尽くしなので手に入るアルバムを片っ端から当たってみることにしました。ところがどれも違う。RCAヴィクター系の音源や、「シカゴスタイル」とは一線を画すレッド・ニコルズやビックス・バイダーベックなどもその過程で買い集めて行きます。すると今度は、ピー・ウィー・ラッセルというこれまた独自のスタイルとヴァイブレーションを持ったミュージシャンに当たったりして、これはこれでコレクションを広げていくわけです。そうした過程で色々消去していった結果、「"あの曲"はフランク・ティシュメーカーのクラリネットでシカゴ派が録音した "I've Found a New Baby" に間違いない。まだ聴いてないけれどそうに違いない」と結論が出ました。ずいぶん無謀な結論ですが、1)シカゴスタイルで、2)メズ・メズロウでもピー・ウィー・ラッセルでもなく、3)マイナーキーの曲で、4)それでも人を感動させられる力を持った演奏にもかかわらず、5)これまでまだ聴いていない、という要件を満たすのは、もはやこの曲、この演奏以外にないと結論したわけです。

こうなると、後は「果報は寝て待て」。特にじたばたしたり無理に高い廃盤を買わずに待っているうちに、インターネットが普及し、いまはAmazonに吸収されたような格好の"CD NOW"が生まれ、そこで見つけたのがこのCDです。当然ながら "I've Found a New Baby" も収録されています。カードを使って購入し、家に届いたので聴きました。ビンゴでした!CMをはじめて観てから20年後のことでした。

モノが簡単に手に入らなかった時代の話かもしれません。

このセッションのメンバーはマグシー・スパニア(tp)、フランク・ティシュメーカー(cl)、メズ・メズロウ(ts)、ジョー・サリバン(p)、エディー・コンドン(g)、ジミー・ラニガン(b)、そしてジーン・クルーパ(ds)です。クラリネットのフランク・ティシュメーカーはいわゆる夭折の天才で、このCDに収められている数曲しかレコーディングが残っていません。しかし、なんというエモーショナルな演奏なのでしょう。パーカーを聴き、マイルス、コルトレーンを聴いてきた耳でも十分に感動させられます。心がこもっているんですね。

ライナーノーツでVic Bellerbyという人がシカゴジャズをこのように定義しています。

かつて「シカゴスタイルなんて本当に存在していたか?」という疑問を抱いた批評家がいたが、彼の推論に従うことはなかなか出来ない。

それはかつてあったし、今もあるスタイルで、20年代半ばのシカゴの白人ミュージシャンの一団によって開発されたソロと集団演奏の独自のスタイルである。これはニューオリンズの豊かな色彩を持ったアンサンブル中心の過剰なスタイルとは対照的であり、かといってビックス・バイダーベックやフランキー・トランバウワー、エディー・ラングといった彼らとは一線を画す、よりクラシカルな「白人」ジャズの語法とも似ていない。

シカゴスタイルとは本質的に、張りつめていて力強く、そしてある意味で20年代のシカゴの非道徳的な状況を反映した神経症的な影響を感じさせるスタイルである。


20年代のシカゴとはつまり、"Roaring Twenties" (狂乱の20年代)のことであり、それは禁酒法とカポネ率いるギャングに彩られた世界という意味です。このCDでは15曲目 "Home Cooking" あたりまでが本当の意味でのシカゴジャズ(狂乱の20年代から大恐慌まで)で、それ以降はみなテクニックが上達し、かえって普通のスイングジャズになってしまっているところが面白いといえます。

リーダーのエディー・コンドンですが、この人はギタリストというよりも、ジャズのフィクサーみたいな人で、この人のハッタリのおかげでシカゴジャズが記録として残ったわけですが、自身のギターの腕はいまいちでそれでも全体の邪魔になっていないことだけは確かです :-P このCDは再発物で、コロンビア系ではなく再発専門のイギリスのメーカーLiving EraがCD化したもの。下のAmazonでは "I've Found a New Baby" 他のサンプルも聴けます。

posted by G坂 at 22:30| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Stan Getz: Stan Getz Plays (Verve)

stan getz plays

ゲッツのヴァーヴについては、前に『ウェスト・コースト・ジャズ』を紹介しましたが、そこでも予告していたヴァーヴ第1作にして傑作がこの『スタン・ゲッツ・プレイズ』です。

まずこのジャケットがいい!このジャケットを見ていると「ゲッツとはなんていい人間なんだろう」と思えてきますがしかし、彼はどうも人格に難のある人だったらしい。詳しくはビル・クロウの『さよならバードランド』を読んでいただければ分かりますが、この本で私自身ショックを受けたのはベニー・グッドマンとスタン・ゲッツの裏の顔だったりします。

芸術は表現者そのものを表現するといいますが、しかし、この定義は嘘ではないかと思えるほど、ここでのゲッツは素晴らしい。私のようにそそっかしい人間にはよくあることですが、大体1曲目の出来でいい悪いを決めてしまう。これはあながち間違ったことではなくてセッションの中から曲を配列するとき、その配列のセンスというのは確実に見えてくるわけで、クロノロジカルな選集を除いて1曲目に何を持ってくるかにはそのセンスが如実に現れるわけです。特にプロデューサーが優れている場合、1曲目に星となるような演奏を持ってくるので、それで全体の水準が推し量れるのです。

それにしても、このアルバムの1曲目 "Stella by Starlight"。凄すぎます。これはわりと難しい(転調の多い曲で、そのコード感を残しつつ、自然で綺麗なフレーズを出すのが大変な)曲なんですが、ゲッツは難なくそれを達成しています。ソロの2コーラス目なんか、本当にうっとりしてしまいます。4曲目の "The Way You Look Tonight"(今宵の君は)や5曲目 "Lover, Come Back to Me" 通称「ラバカン」のような急速調の曲でもソロのメロディーが曖昧とするところはなく創意にあふれています。8曲目、 "You Turned the Tables on Me" はベニー・グッドマンのところでの経験があったればこそ、9曲目 "Thanks for the Memory" は、ミルドレッド・ベイリー〜ゲッツ〜ショーターとつなぐ一本の伝統の橋を連想させる、実に味わい深いバラードです。

LPフォーマット時代は前半12曲の構成で、メンバーはゲッツのテナーにジミー・レイニー(g)、デューク・ジョーダン(p)、ビル・クロウ(b)、フランク・アイソラ(ds)です。CDになって追加された4曲はゲッツのほかジミー・ロウルズ(p)、ボブ・ウィトロック(b)、そして御大マックス・ローチ(ds)です。

私はCD時代初期の輸入版で求めたのでボーナストラックが4曲も入っていますが、最近のCDでは音質重視のせいか1曲程度しかボーナスが入っていないのですね。アマゾンではいま手に入りづらいですが、すぐに再発されると思います。今すぐという人は、街のCD屋を覗いてみればありますよ。

posted by G坂 at 00:38| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月23日

Hank Jones: Bop Redux (Muse)

Bop Redux

ハンク、サド、エルビンのジョーンズ3兄弟の長男であるハンク・ジョーンズは、長男らしいというのか、実に落ち着いた感じのピアニストです。この人はスイング寄りの中間派ピアニストで、その柔軟性からベニー・グッドマンと一緒にやったり、レスター・ヤングとコンボを組んだり、あの名盤『サムシング・エルス』に参加したりと活躍しますが、70年代末になって、日本での第?次ピアノトリオ・ブームの波に乗って「グレート・ジャズ・トリオ」を結成し、相当のレコードを吹き込みました。このトリオは重鎮ハンクに、マイルス第二次黄金カルテットのロン・カーター(b)とトニー・ウィリアムス(ds)が加わるということでかなり話題になりましたが、少し話題先行だったような気がします。選曲も「いかにも」で私はあまり買っていません。

それに比べて、'77年吹き込みの『バップ・リダックス』はビバップにばっちり焦点を当て、曲もパーカーとモンクのものをチョイスしているのでブレがまったくありません。メンバーはハンクのピアノにジョージ・デュヴィヴィエ(b)、ベン・ライリー(ds)です。渋い人選です。

A面1曲目 "Yardbird Suite" で、すでにこのアルバムが成功していることが分かる仕上がりになっています。ハンクに特徴的な「分かりやすい」フレーズがビシビシ決まっていく快感!2曲目もパーカーの代表曲 "Confirmation" 通称「コンファメ」です。これもまたハンクの資質に合った曲で名演となっています。3曲目はモンクの "Ruby, My Dear"。モンクの曲であってもハンクはお構い無しに分かりやすくしてしまいます。これは特にロマンティックなバラッドに仕上げ、A面のオアシスとなります。A面最後は再びパーカーの "Relaxin' with Lee"。ベースソロや、4バースを交えて景気良くやっています。

B面1曲目は "Bloomdido"、B♭のブルースです。この曲と上の"Relaxin' with Lee" はモンクの参加した『バード・アンド・ディズ』で演奏されていた曲です。そしてB面2曲目。寺島さんが「ジャズのアルバムはB面2曲目に真の名演あり!」と喝破されていましたが、名曲中の名曲 "'Round Midnight"が来ます。ここでのアドリブも実に淡々として分かりやすいフレーズを連ねているのですが、なぜか引き込まれ、そして飽きることがない。3曲目はB♭循環の "Moose the Mooche"。やはりパーカーの曲です。原点は前の記事でも紹介した『オン・ダイアル』に入っています。最後はモンクの "Monk's Mood"。テーマを崩し気味に弾いて終わっています。

このアルバムはピアノトリオが本当に好きな人、渋みを味わえる人が聴くと至福の演奏だと思います。昔は手に入らず私もLPで求めましたが、最近CD化されたようです。

posted by G坂 at 11:47| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

Sonny Stitt, Bud Powell & J.J. Johnson

Stitt, Powell & JJ

ソニー・スティットはアルト、テナーの両刀遣いだけれど、パーカー存命中はアルトを吹かずにテナーをもっぱらにしていたといわれています。このアルバムは、SP時代のバップのセッション2つを集めたアルバムで、タイトルも『スティット、パウエル&JJ』と単に参加者の名前を並べただけのものです。おまけにバド・パウエルとJJ・ジョンソンは共演していない別のセッションの演奏を編集したもの、実にいい加減なネーミングですが、内容はひたすら濃い。それはバド・パウエルが全盛期を迎えて最高の演奏を繰り広げているからです。バド・パウエルが「プレスティッジ」レーベルに残したのはここでの8曲だけだといわれていますが、その影には面白いエピソードがあった。ライナーノーツの油井先生の記事を引用しましょう。

このセッションを通じてスティットは、終始パウエルを立て「偉大なパウエルさん」という尊敬とも皮肉ともつかぬ呼びかけをしていたが、これがパウエルの気分をよくし、迫力あるプレイを見せる原因になったのだそうだ。そこまではよかったが、ついにその気になったパウエルは、副調室にいた社長のワインストックを呼びつけ、「おい太っちょ、表にいってサンドイッチを買ってきな」とやった。座がいっぺんに白けてしまい、ワインストックは二度とこの無礼なパウエルを録音しなかったのである。


しかし、スティットの努力のおかげで、この日のバドは凄まじく火の出るようなソロを取っています。メンツはソニー・スティット(ts)とバド(p)、カリー・ラッセル(b)、そしてドラムがマックス・ローチです。いわばバドのトリオにスティットが加わった感じです。一曲目の"All God's Children Got Rhythm"(神の子は皆踊る)はチョッパヤのテンポで一気に畳み掛けるようなソロになっています。バドはこの曲と相性がよいらしく、トリオによるヴァーヴの『ジャズ・ジャイアント』でもこの曲を取り上げています。

2曲目の"Sonny Side"はどう聴いてもパーカーの"Dexterity"、"Dexterity"がデクスター・ゴードンにちなんで名づけられたタイトルであるため、スティットが洒落で自分の名前を入れて「ソニー・サイド」としたのでしょう。当然B♭循環です。3曲目の"Bud's Blues"はタイトルとは裏腹にソニー・スティットの作曲したブルースです。4曲目の"Sunset"ははっきりいってスタンダードの"These Foolish Things"です。まあ、露骨な使用料対策 :-P 。そのおかげではっきり分かるのは、スティットがテナーの場合レスター・ヤングの弟子といえることです。かなりバップのフレーバーを入れていますが、バラード解釈の骨格はレスター・ヤングのものとそっくりです。バド・パウエルはバックでのコンピングに徹していますが、バックでも個性がはっきりと分かるのがバドやモンクの特徴ですね。

5〜6曲目は"Fine and Dandy"の2テイク。ここではバドとスティットが丁々発止、ソロの真剣勝負を繰り広げています。これだけなぜ2テイクあるのかというと、テイク1ではスティットを押しのけるようにしてバドがソロを取っているんですね。演奏としては欠点のように見えてもジャズとしてはよりリアリティーがあるので、ワンコーラスずつソロ交代をした完成度の高いテイク2とあわせて収録したものと思われます。

7〜8曲目の"Strike Up the Band"、"I Want Be Happy"は日本のモダンジャズ黎明期に録音された夭折の天才ピアニスト守安祥太郎による『モカンボ・ジャム・セッション』でも演奏されていて、しかもただ演奏されているだけでなく、コンセプトやソロのアイデアなどこのセッションにクリソツといっても過言ではありません。よほど聴き込んで分析し影響を受けたのでしょう。そう言えば3曲目の「バドのブルース」も秋吉敏子が「敏子のブルース」として吹き込んでいたりして勉強の後をうかがわせます。そういう意味でこのアルバムには日本モダンジャズの母乳であったという側面もあるんですね。

8曲目の"Taking a Chance of Love"はどちらかといえば和んだ感じの演奏で、パウエルセッションの締めとなっています。

このアルバムはSP時代の3分芸術なので、1曲1曲はあっという間に終わってしまいますが、集中して耳を傾けるとものすごい気迫が伝わってきます。

J.J.ジョンソンの参加した後半のセッションはバドに代わってジョン・ルイスが、カーリー・ラッセルに代わってネルソン・ボイドがベースとして加わっていますが、ジョン・ルイスが参加したこととJJのトロンボーンの丸みのある音色で趣味のよい演奏に仕上がっています。

posted by G坂 at 01:12| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月20日

Charlie Parker: On Dial (Dial)

On Dial
パーカーがジャズの歴史に与えたインパクトの大きさから言えば、「サヴォイ・セッションズ」と「ダイアル・セッションズ」が双璧といえます。サヴォイについては以前の記事で取り上げたので、今回はダイアルのCDを取り上げようと思います。

サヴォイとダイアルの違いを喩えてみると、サヴォイが「創世記」であるのに対してダイアルは「詩篇」といえるでしょうか。あるいはサヴォイが「散文」、ダイアルが「韻文」。などとあまり無駄な例え話をしても仕方がないですが、サヴォイは資金不足からあまり、というかほとんどスタンダードナンバーを吹き込ませなかった(使用料がかかる)。あの有名な"Koko"も、そうしたサヴォイのふところ事情から生まれたわけです。ボツになった吹き込みを聴くと、最初パーカーとディズは堂々とチェロキーのメロディーを吹いているのですが、あわてたプロデューサーが止めに入っている。一方のダイアルではスタンダードをどんどん吹き込み、パーカーのこうした曲に対する解釈がよくわかるわけです。

また、パーカーのダイアルというとすぐに返ってくる返事が「ラバーマン・セッション」です。パーカーが朦朧とした意識のまま吹き込んだ「ラバーマン」はヨレヨレな演奏なのに、それでも聴く人を感動させる天才の不思議な側面を映し出した演奏です。有名な事件なのでご存知の人も多いでしょうが、間違った説が流布されているのをよくみるのでここで改めて書いておきましょう。パーカーが意識朦朧となったのは麻薬を飲んだせいではなく、麻薬を飲めずに仕方なく酒をがぶ飲みしたせいです。この吹き込みはロスで行われたのですが、地元の麻薬の売人であった「エムリー・ムース・ザ・ムーチェ・バード」という男が逮捕され、ヘロインが手に入らなくなって禁断症状が出始めたパーカーは大量に酒を飲むようになり、「ラバーマンセッション」の直前にも1リットルほどのウィスキーを飲んでいたという証言もあります。ヨレヨレのまま演奏を終えたパーカーはホテルに戻り、全裸でうろつきまわり、部屋で小火を出してしまったため逮捕され、裁判の結果カマリロ州立病院に入れられるという顛末です。このカマリロ病院を退院して2度のセッションまでが「ウェストコースト編」としてまとめられています。そしてその後ニューヨークに戻ったパーカーを追って、ロス・ラッセルがニューヨークで録音したダイアルセッションが「イーストコースト編」です。

曲数が多いので代表的なものだけ取り上げますが、「ウェストコースト編」ではまず、上に出てきた麻薬の売人の名前をつけた"Moose the Mooche"という曲があります。これはB♭循環で典型的なビバップの演奏です。"Yardbird Suite"(ヤードバード組曲)はパーカーの書いた曲の中でも、特に哀愁のある名曲として有名です。"Ornithology"は「鳥類学」という意味で、パーカーのあだなバードにひっかけられた曲名で、"How High the Moon"のコード進行を下敷きにしています。"Night in Tunisia"では有名なブレーク(リズムの進行を止めてホーンが自由に吹く部分)、その名も"Famous Alto Break"が聴けます。そして件の"Lover Man"。この後は入院してしまい、退院してからは歌入りのセッションがありますが、特にいいのは"Cool Blues"と"Relaxin' at Camarillo"。どちらも12小節のブルースですが、カマリロのほうはちょっと変形したB♭のブルースで、面白い曲想です。

「イーストコースト編」にはB♭循環の"Dexterity"や"Honeysuckle Rose"のコードを使った"Scrapple from the Apple"のように後々まで長く演奏され続けるバップの名曲が目白押しですが、なんと言ってもスタンダード集、特に"All the Things You Are"のコード(これが複雑なんです)を借りた"Bird of Paradise"を特筆すべきでしょう。ジャズでアドリブソロを取る本当の意味は、曲の髄というかオリジナル曲よりもさらに美しいメロディーを取り出すことにあると思うのですが、これなどまさにその典型、原曲をはるかに超えた美しい演奏になっています。また、ヒップホップというのかクラブ系の音楽でこの演奏をコラージュした曲を耳にしたことがあります。スタンダードは"Embraceable You"、"My Old Frame"、"Out of Nowhere"、"How Deep Is the Ocean"が取り上げられており、またオリジナルの装いをした"Quasimado"も"Enbraceable You"のコードを使っています。

渋いけれど、噛めば噛むほど味の出る「サヴォイ」に対して、「ダイアル」は曲もバラエティー豊富で最初からとっつきやすく、聴き込めばそれだけ奥の深さが見えてくるレーベルだと思います。Vol. 1がウェストコースト編、Vol. 2がイーストコースト編です。

posted by G坂 at 18:57| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月19日

Tina Brooks: True Blue (Blue Note)

True Blue
ハードバップはリスナーサイドの用語らしく、ミュージシャン崩れみたいな人が「ミュージシャンはハードバップなんていわないよ」とのたまっていることがありますが、実際には「ハードバップ」としか言いようのないジャズのスタイルがあるのは事実です。以前、ケニー・ドーハムの記事でB級ハードバップについて書きましたが、B級といわれるハード・バップのアルバムの特色は1)くすみ色の強いサックスが入っている、2)曲はマイナー調がメイン、3)バップのしきたりに則ってモードとか無調とかに走らない、そして最も重要なのはマイルス、ロリンズ、コルトレーン、モンクみたいな大物がいない、という点ではないでしょうか。

ティナ・ブルックスもくすんだ音色のテナー奏者で、何か斬新なことをやって次代を切り拓いて行くタイプのサックスではなく、演奏やフレーズの癖とか音色の特色で楽しむ感じのミュージシャンです。この作品は彼の唯一のリーダー作としてBNに残したものとして有名なアルバムです。吹き込みは'60年。これが唯一のリーダー作というせいで、私はこの人が夭折のミュージシャンだと思い込んでいました。しかし実際に亡くなったのは'74年なんですね。それでも42歳という若さでした。

これは6曲目のスタンダードを除いて、全編ティナのオリジナル曲です。1曲目"Good Old Soul"が、もうすでにB級ハードバップの香り全開です。待ったりとしたテンポでマイナー調の曲。最初に飛び出すのがティナのテナー。くすんだ音色で哀愁のあるソロを繰り広げます。たぶんハードバップ好きはこの曲想とティナのソロで参ってしまうはずです。続いてフレディー・ハバード(tp)のソロ。これがまた絶品です。この人は後年、上手くなりすぎて時に無意味なフレーズに走ったり、あまり「心」が感じられなくなる傾向が出てきて、マイルスの自伝でも「練習のし過ぎで悪くなった例だ」などと批判されていますが、ここでは実に丁寧で味わいのあるソロをします。ピアノはデューク・ジョーダン、ベースはサム・ジョーンズ、ドラムアート・テイラーです。

2曲目の"Up Tight's Creek"は軽快なテンポの曲で先発ソロはフレディー、続いてティナに引き継がれますが、二人とも乗っています。続いてジョーダンのピアノソロ。この人なんかも、テクニック的にはいま一つといわれているけれど、味わいとそしてなんと言っても書く曲が綺麗なんですよね。3曲目の"Theme for Doris"(ドリスのテーマ)はマイナー調にアフロキューバンリズムを組み合わせて、まさにハードバップの典型。色々な料理の可能性も感じられる名曲だと思います。ソロの部分は4ビートに戻り、ティナのワンホーン。そのせいかのびのびと実に表現豊かで楽想にあふれたソロを取っていて、このアルバムのハイライトを形成しています。

4曲目はタイトル曲"True Blue"。ファンキーな曲調で「「ディードゥドゥディドゥディドゥ」というリズムをベースにティナとフレディーが、これまでの曲よりもずっと自由にソロを取っています。ソロは短いんですがなんとなく次の時代を予感させるような演奏なのが興味深い。5曲目の"Miss Hazel"というのは、サンジェルマンで大騒ぎしていたヘイゼル・スコットのことでしょうか?かなり速いテンポで、おそらく「ハウハイザムーン」のコード進行を使った曲です。そういう意味でパーカーの吹き込んだ「オーニーソロジー」に迫ろうとする勢いのある演奏で、味というよりもビ・バップ全開のソロの妙技を楽しむ演奏になっています。最後はスタンダードの"Nothing Ever Changes My Love for You"。ラテンリズムを交えて楽しそうに演奏しています。

今回、記事に書こうと聴きなおすことで色々発見もありましたが、実に奥の深い素晴らしいアルバムです。こういうアルバムは初心者の人ではなくて、パーカー、バド、モンク、マイルス、コルトレーン、ロリンズ等々、大物を聴き込んだ人にぜひ聴いてもらいたい作品です。もっとも、そういう人はもうすでに聴いていたりするんですが。 :-)

posted by G坂 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月16日

Geri Allen: In the Year of the Dragon (JMT)

in the year of the dragon

人間というものは(と、志ん生は開口一番よく言っていましたが)わがままなもので、キップ・ハンラハンの項目で書いたように、「ごりごりの4ビートに飽きた」と言ったかと思えば、今度は「ゴリゴリのピアノトリオないかな?でも、バド・パウエルとかバリー・ハリスじゃなくて、もっと現代性の強いの」などと言い始める。そんな気分になった時にちょうど見つけたのがジュリ・アレンです。4ビートファンの間ではSegmentsが人気だけれど、これ今手に入らないんですよね。ということで昨年Amazonで買ったCDがこれ。メンツもジュリ・アレン(p)、チャーリー・ヘイデン(b)、ポール・モチアン(ds)と『セグメンツ』と同じです。

ジュリ・アレンというとブルックリン派とかM-Baseとか言い出して、とにかく小難しい感じがするので避けていたのですが、たまに行く八王子『ロマン』のマスターが昼は絶品「煮カツサンド」を作りつつ、夜はブルックリン派のアルティストとして演奏しているのを聴き、M-Baseにも興味を持つようになりました。また、このアルバムや上の『セグメンツ』に代表されるようなバップファンにも違和感なく受け入れられるアルバムもあります。私もゴリゴリ守旧派抵抗勢力的バップファンなのでその点は太鼓判です。

1曲目がいきなりバド・パウエルの曲です。これを聴いて思うのですが、やっぱりジャズの魅力は4ビートのバップ、そこに現代のフレーヴァーがちょっとかかっているぐらいではないでしょうか?2曲目の"For John Malachi"はジュリ本人の曲ですがなかなかいいバラードです。3曲目はゲストとしてケーナという竹笛が入っています。吹いているJuan Lazoro Mendokasという人物の曲。なんかバド・パウエルの"Glass Enclosure"みたいです。

ベーシストやドラマーにはいい曲を作る人が多いと以前に書きましたが、ここでも乗りのよい4曲目の"See You at Per Tutti's"、そして超有名な8曲目の"First Song"がチャーリー・ヘイデンの曲です。4曲目では自分の曲らしくベースソロを延々とっていますが乗りがよいので飽きません。いっぽうドラムのモチアンの曲が5曲目と9曲目。5曲目の"Last Call"ではやはりモチアン本人がバシャバシャ叩いています。ポール・ブレイとかにありそうな感じです。6曲目は再びジュリの曲ですが、最初に続くベース・ソロが一分ぐらい続くので、ほかの事を考えていたりします。演奏としては一番現代的というかムズカシ的です。テンポも途中で変わったりしてブリリアント・コーナーズを髣髴とさせる演奏です。むしろ分かりやすいのが7曲目の"Invisible"、オーネットの作品です。8曲目の"First Song"ではメロディーに絡みながらのベースがやはりいい。同じように9曲目でタイトル曲の"In the Year of the Dragon"もテーマやソロに果敢に絡んでくるモチアンが(ちょっとうるさい気もしますが)いけています。

ちなみにJMTのこのジャケットは色気がないこと夥しいんだけれど、このシリーズはM-Base派の名作を復刻していて、私はこれでスティーブ・コールマンやカサンドラ姐さんの旧作を手に入れました。

なお、Wordpressにはカスタムフィールドという項目があって、これを使うと曲目が表示できそうなので、試験的にやってみます。シングルポスト(この記事だけの表示)のときに下に出るようにしてみました。(ウェブリではでません)
posted by G坂 at 20:54| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Duke Ellington:The Essensce of Jazz Classics 9

ellington

かなり最初の頃に買ったベスト集です。

この頃RCAでは The Essence of Jazz Classics(ジャズ栄光の巨人たち)と題して、膨大なRCAヴィクター系の音源のベスト集を出していました。そのカタログがこちら(ライナーノーツの裏面のため、ジャケットサイズなので二つの画像に分けてあります)。

catalog 1; catalog 2

どれも膨大な量の中から油井先生が中心となって選りすぐったもので、とりわけエリントンは吹込みが多く、油井先生自身ライナーノーツで次のように書いています。

そこで初期(1927年)から31年までの代表作8曲をA面に、ジミー・ブラントン(ベース)が在団しており、一般にエリントン一代の黄金時代とされている1940-41年の傑作8曲をB面においた。これでも「なぜ《ソリチュード》が洩れたのか?」といった詰問が出ることは覚悟している。「もっとききたい」という方には、栄光の遺産シリーズをお買い求めになることをおすすめする。内容は絶対にまちがいないのだから−−


当時はLPレコードが基本フォーマットで、これは片面30分がやっと入るか入らないか、音質のことまで考えれば片面23分程度が望ましく(ここから46分テープが出て来る)、3分芸術のLP化でも片面8曲が限度だったわけです。サッチモの28年ベスト集で片面10曲、計20曲というすごいLPもありましたが。したがってベスト集を編む場合、今以上に選りに選る必要があったのです。しかし、そのことが逆に選ぶ側の集中力というか気合を高め、結果的に印象に残る選集が出来ていたような気がします。上のカタログでも、エリントンはじめベニー・グッドマンやアーティー・ショウなどはよほど耳と知識の肥えた人でないとこういう選曲は出来ない。だからどれも印象に残るアルバムで、今でも大切に持っています。

このアルバムでは初期のジャングルスタイルから"Creaole Love Call"や"Black and Tan Fantasy"(黒と褐色の幻想)、そして"Mood Indigo"が選ばれ、一方B面にはエリントンの歴史上最高の傑作といわれる"Jack the Bear"と"Koko"の2曲のほか、今でも演奏されるエリントンのヒット曲が収められています。エリントンのベスト集を買う場合、最低でもこの「ジャック・ザ・ベア」と「ココ」が収められているものを買うのが賢いやり方です。

しかし今では、ベスト集どころか全集に近いものでさえ昔のベスト集に近い値段で買えるんですね。この記事を書くために、ざっとAmazonをあさってみましたが、下に挙げたアルバムなど値段、曲数、編集ともによく出来ているんではないでしょうか。

posted by G坂 at 00:28| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Modern Jazz Quartet: European Concert (Atlantic)

Modern Jazz Quartet European Concert
MJQ (The Modern Jazz Quartet)はどのアルバムを聴いても良く(初期のケニー・クラークは少し浮いている気もしますが)、『ジャンゴ』、『フォンテッサ』、『コンコルド』、『ピラミッド』といったレコーディング4大名盤も素晴らしいし、映画音楽でもある『たそがれのヴェニス』なども優れた名盤です。

おそらくあまりジャズを聴いたことのない人に、ジャズの典型的なイメージを求めると、MJQのように全体はクールでかつ部分はファンキーな演奏を思い浮かべるのではないでしょうか?

私事ですが、ジャズを聴き始めたころ、やはりこのMJQに嵌り、ちょうど日本武道館でリユニオン・コンサートを開くことになって来日した折、武道館まで田舎の高校生として出かけました。お金がないので、近所の中学生が英語を教えてくれる人を求めていたのを聞きつけて、母親の伝で紹介してもらい、2ヶ月ほど中学英語を教えてあげて捻出したお金で行きました。会場には錚々たる著名人(今で言うセレブ)が来ていました。油井先生とはその前に一度お会いしたことがあってご挨拶をしたほか、高嶋忠夫夫妻、タモさん、ヒノテル氏などもお見かけしました。途中トイレに迷い、武道館の構造もあって一周していると、彼らの楽屋の前にたどり着いてしまい、警備員にとがめられているところをパーシー・ヒースに助けてもらい、その恩も忘れて、精一杯の英語でミルト・ジャクソンに向かって"I'm a fan of yours"といった思い出があります :-) 子供にベースラインは難しすぎたのです・・・

今回紹介する『ヨーロピアン・コンサート』は、MJQ全盛時代のライブ録音です。上に挙げたような名作を丹念に一枚一枚聴いていくのも一つですが、このような名曲ライブを聴くこともMJQに限ってはありだと思っています。というのも、スタジオ録音が、どうしても「静」に傾くきらいがあるのに対して、ライブだと「動」に傾き、よい意味で彼らが本音を繰り広げたり、歓声に乗ってコーラスを増やしてアドリブしたりするからです。それでも、ユニットとしてのまとまりは壊していない、絶妙なバランスの上に成り立っているのがこのアルバムです。

私が特に好きなのは、冒頭の"Django"から、レイドバックしたミルト・ジャクソンの"Bluesology"にかかるところ、そして、トレイドマークともいうべき"Bug's Groove"が終わって「四月の思い出」に繋がっていくところなどです。

MJQの買い方としては、これと『ラスト・コンサート』を最初に購入し、続いて気に入った曲を各アルバムに当たって原点を見ていくのがかしこいやり方だと思っています。
posted by G坂 at 00:25| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月10日

Kip Hanrahan: A Thousand Nights and a Night

Thousand nights

ガッツのあるバップ系の4ビートジャズを聴き続けていると時々浮気したくなる時があります。特にメインストリームからちょっと外れたところで、それでもクリエイティブな音楽を作っている人はいないか、などと時折アンテナを拡げてみるわけです。そうすると時にヒットしたり、時にはスカを掴まされたりと安定しないこと夥しいわけですが、それでも名作にめぐり合った時の感動が忘れられないのでやめられません。

数年前までは京王八王子の駅ビルに入っている「タワレコ」に強力なジャズ耳を持った女性店員がいて、彼女が「ポップ」といってCDに貼り付けられている手書きの推薦カードを書いていたのですが、そこで推薦されているものは大抵が当たりでした。特に未知のものを購入する時はこのポップ記事が頼りだったわけです。もっとも相性もあるわけで、今はなき丸井八王子の「ヴァージン」にいたポップ書きの人とは相性が悪かったらしく、相当なスカ(私にとっての)を買うことになりました。

今回紹介するキップ・ハンラハンの「千一夜物語」もそんな風にしてタワレコで購入した一枚です。キップの「千一夜」には二種類あって、ここで取り上げるパープル一色のジャケットのほうが"Shadow Night"というサブタイトル、もう一つのほうのサブタイトルは"1-red Night"となっています。どちらもいい作品ですが、個人的には「シャドーナイト」の2枚目がもっとも気に入っています。

この作品は「アラビアン・ナイト」をモチーフにした作品ということで、曲の合間にあるいはリズムを従えて「シャラザード姫が滑った」とか「転んだ」などという台詞が語られる仕様となっていて、曲名も「アラビアン・ナイト」のタイトルや一節がそのままつけられているようです。しかし、そのタイトルや一節が曲とどういう関係にあるのかアラビア文学者でもない私にはさっぱり分かりませんし、そもそも曲として分節化されていないで延々続くんですね。全部で一曲という感じは、電化マイルスの『アガルタ』『パンゲア』のような感じでもあるけれど、あそこまで怒っているとか、苛立っている音楽ではなくて、このアルバムはむしろ非常にナチュラルな演奏です。ただ普通のジャズアルバムのように、「4曲目"Lover, Come Back to Me"のトミー・フラナガンのソロは...」という風な紹介ができないタイプなんですね。

このアルバムの2枚目はドン・プーレンのジャズっぽくて静かなピアノトリオから始まりますが、それが徐々に盛り上がり、畳み掛けるようなパーカッションの演奏が差し挟まれるごとにテンションを増し、9曲目でついにクライマックスを迎え、その後静かにフェードアウトして14曲目の語りで終わるという構成になっています。ここでのパーカションが複雑なポリリズムとなっていて、聞いていて心地よい。以前サッカーネタで書いたと思いますが、日韓ワールドカップの時のセネガルの応援団がずっとポリリズムとたたき出していて、このアルバムを彷彿とさせました。

キップ・ハンラハンという人は自分で楽器を演奏するわけではなく、クラシックのように指揮棒を振り回すわけでもなく、ただ構成などを決めて演奏を指揮するプロデューサーのような人です。CDに入っていたリーフレットに写真が載っていて、非常に渋い感じのいい男が写っているのですが、数年前ブルーノート東京で行われたライブを見に行った人の話だと、写真とは大違いの禿げ散らかした中年のおじさんだったそうです・・・とはいえ、このアルバムはとてもよく出来ていて、ジャズとワールドミュージックの境に位置する名作だと思います。
posted by G坂 at 00:26| jazz | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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